昭和59年(1984)度 第37回社会人大会決勝

昭和60年(1985)1月6日 国立競技場

新日鉄釜石 22-0 神戸製鋼

釜石、ついに7連覇を達成

昭和59年(1984)度 第37回社会人大会決勝
1985年1月6日 G:国立競技場 R:八木宏器 KO 14:00
新日鉄釜石 22 0 神戸製鋼
1 石山 次郎(能代工) 10 0 1 兼平 盛輝(法大)
2 多田 信行(黒沢尻工) 12 0 2 松田 真一(淀川工)
C3 洞口 孝治(釜石工) 3 中山 敬一(同大)
4 菊池  保(黒沢尻工) 2 T 0 4 林  敏之(同大)
5 瀬川  清(釜石工) 1 G 0 5 辻本 好四郎(淀川工)
6 高橋 博行(秋田工専) 0 PG 0 6 安積 英樹(慶大)
7 氏家 靖男(黒沢尻工) 0 DG 0 C7 東山 勝英(慶大)
8 千田 美智仁(黒沢尻工) 8 佐藤 英典(同大)
9 坂下 功正(宮古工) 1 T 0 9 萩本 光威(同大)
10 松尾 雄治(明大) 1 G 0 10 山北 靖彦(法大)
11 金子 敦之(筑波大) 1 PG 0 11 菅野 有生央(同大)
12 金野 年明(一関工) 1 DG 0 12 大山 文雄(明大)
13 小林 日出夫(明大) 13 藤崎 泰士(早大)
14 永岡  章(慶大) 5 10 14 岩崎 有恒(早大)
15 谷藤 尚之(函館西高) 15 下坂 斉司(法大)

“私が選ぶベストゲーム”となれば、劇的な大接戦になるのが当然だ。その意味ではこの試合は例外である。しかし私は、社会人大会で前人未到の7連覇を達成した新日鉄釜石のベストゲーム、12人の選手がつなぎまくって生まれたべストトライ、など歴史に語り継がれるべき試合だと思って選んだ。

 釜石は6連覇のメンバーに新たに菊池保と小林日出夫が戦列に加わっている。すべてのチームが打倒釜石に燃え上がっている中、さすがの釜石も簡単には勝ち進めなかった。準決勝の東芝府中戦では九死に一生を得た。後半10分に東芝WTB戸嶋の猛タックルから、CTB石川にトライを許し19−10とリードされ、釜石もこれまでかと思われたが、CTB金野年明の3PGで辛くも引き分けに持ち込んだ。完全な負け試合を拾って、しかも抽選で決勝に進出したという際どいものだった。東芝3Tに対し釜石は1T、現在の得点法であれば釜石は20−22で敗れていた。

 息を吹き返した釜石は決勝の神戸製鋼戦では、見事な展開ラグビーで神鋼を圧倒した。

 前半22分、SO松尾のロングキックで神鋼ゴール前に迫った釜石は、スクラムからNo8千田がサイドアタックしたラックからSH坂下がもぐってトライ。33分には神鋼陣22メートルのスクラムから神鋼の第3列が松尾をマークして飛び出した穴を突いて再び坂下がトライ、金野ゴールで10−0で前半を終了。後半に巻き返そうと意気込む神鋼に、5分釜石松尾がフリーキックから見事なドロップゴール[当時はフリーキックから直接ドロップゴールが狙えた]を決めて突き放す。さらに金野がPGを決めて16−0とリードを広げる。

 後半21分に社会人ラグビー史、いや日本ラグビー史に長く刻み込まれるトライが生まれた。歴史に残る12人つなぎのトライは、後半21分自陣ゴール前のモールから坂下、松尾、小林、千田、坂下、谷藤、永岡、石山、氏家、洞口、坂下、谷藤と、すべてパスでつながれたものだ。このトライは『ラグマガ』1985年3月号に連続写真で掲載されている。

 余談だが、同誌P98に『いぶし銀の名キッカー“おとっつぁん”金野の足に観客は魅せられた』とのコラムがあり、釜石7連覇を支えたCTB金野利明[6連覇に出場]の名キッカーぶりと人柄を紹介している。

 3T、2G、2PGの22点をあげた釜石は、4年連続決勝戦で相手をシャットアウトする離れ業で7連覇を達成した。この後、日本選手権試合でも7連覇を遂げた釜石の中心選手、松尾雄治が惜しまれつつ引退した。

 この試合が初の決勝進出となった神戸製鋼が、前人未到といわれた釜石7連覇の記録に並ぶとは、このとき誰が予測したであろうか。