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(九)戎島

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 【所在】戎島は東南二方は内川を隔てゝ車、櫛屋、戎、熊野の諸町に對し、西は北波止に接續し、北は古川を隔てゝ三寶村字山本新田(神南邊通)に對した廣汎な區域で、行政上戎島一丁より五丁に分ち、工場地帶として知られ、岸和田紡績株式會社堺工場、長崎紡織株式會社堺分工場等の大工場がある。【元祿二年の戎島舊址】元祿二年堺大繪圖に示された戎島の區域を現在と比較すると、大體は内川の西、古川の南、岸和田紡績株式會社堺工場表門筋以東、卽ち戎島一丁、同二丁、同三丁及び市之町西四丁(市尋常小學校表門筋以東千歳橋筋以西の北半分)熊野町西三丁( 千歳橋筋以西 )に跨る區域に該當してゐる。戎宮及び慈眼菴の舊址は古川の南、内川の西、大師橋筋の東、事代主神社( 戎宮の後身 )表門筋の北に當る區域で戎島一丁に當り、劇場址は戎島二丁三十九番地河中卯平氏住宅の左右が表口に當つてゐる。【港灣舊址】又港灣址は内川の中で古川の分岐點以南、千歳橋東方の屈曲迄に當り、其間南方は略々當時の東西幅員を存してゐるが、東側戎橋以北は一帶に埋沒し、同じく西側は事代主神社南方の一部が埋つた位で其他は變はつてゐない。然し車之町濱側は甚しく埋沒して堺監獄署址、戎小公園の一部に當つてゐる。【新橋を架す】續いて築成された鹽濱は(東西百餘間南北三町)南海鐵道堺驛構内北方及び岸和田紡績株式會社堺工場の一部に當り、【町名を附す】次で元祿八年に命名された西穀物、東穀物、船、本戎、清水、萬屋、西島、新橋、伏見、宮前、南島、北島の十二町を現在と比較すると、【新規町名と現在町名】東西兩穀物町は市之町西四丁卽ち大道より西へ七筋目の中央以北を指し、西穀物町は同じく八筋目の中央以北に當る。船町は戎島三丁の内千歳橋筋より西一筋目の戎橋筋以南及び熊野町西三丁を云ひ、本戎町は同町の内千歳橋筋の西側戎橋筋以南及び熊野町西三丁をいふ。清水町は戎島三丁の内戎橋筋以北、萬屋町は同町の濱筋を云ふ。西島町は戎島二丁の内大師橋筋に當り、新橋町は戎島一丁の内新橋西詰北側、伏見町は戎島一丁大師橋筋に位し、宮前町は同丁の内事代主神社表門前南北筋濱側に相當し、南島町は同じく大師橋筋に當り、北島町は同町の内大師橋南詰を指稱してゐる。【お鯛茶屋】其頃出來た有名なお鯛茶屋の舊址は、岸和田紡績會社工場の西側に當つてゐる。

第百三十三圖版 元祿時代港址(内川神南邊橋南方)