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札幌の石刃鏃文化

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 さて、札幌市内で発見された石刃鏃文化の所産と考えられる二点の石器は以下の様相を呈している。
 一、S九一遺跡(白石区北郷三条五丁目付近)より採集された細身の石刃。
 二、S九六遺跡(白石区南郷一三丁目南付近)より採集された石刃を素材とした石槍。

図-8 石刃鏃文化の石器(市内出土)

 いずれも、月寒川に関連する河岸段丘上にあり、標高は一四~二〇メートル程である。この二点の石器は、石刃鏃そのものではない。きわめて高度な石刃技法によって作り出された細身の石刃(ブレード)で、石刃鏃とまったく同様な技法にて作られた石刃槍である。畑地等からの採集資料のため、伴出土器、出土状況についてはわからない。石器の形状、製作技法から考えて石刃鏃文化の所産と推定された。石刃鏃文化の石器群は、かつては先土器文化の所産と考えられていたほど非常に高度な石刃技法に特徴がある。
 石器組成としては、石刃を素材とする石刃鏃、石刃槍、ナイフ状石器、削器、搔器、彫刻刀、植刃、さらに擦り切り技法によって作られた磨製石斧、扁平な川原石の長軸両端に打ち欠きを施す石錘が多量にある。石器組成を見るかぎりでは、石刃を素材とする石器類の多様さが指摘されるが、磨製石斧の存在、多量に出土する石錘等北海道東北部における縄文時代早期の基本的な石器組成よりほとんど逸脱していない。
 また、高度な石刃技法は他の時期に一切波及していないという事実がある。このことは、大陸より流入してきた時期がきわめて短期間であり、文化として北海道に定着しなかったことを示している。