まず対象者であるが、これは五〇〇石以下の旗本、御家人および同惣領、次三男、厄介(寄食者)が主体であり、それに清水附の者、陪臣、浪人が加えられている。
給与は、旗本、御家人については元身分に応じた扶持米等に加えて、在住手当金・扶持が支給され、移住に際して引越料等も支給されることになる。イシカリ在住の手当支給の事例は見出していないが、イワナイ在住の常見栄太郎の場合、元身分に応じた分が高四〇〇俵、在住の御手当扶持が一二人扶持、御手当金が二四両支給されている(遠当守都御用所(おたすつごようしょ) 御切米幷御手当類割渡留)。しかしこれは以前からの幕臣の場合であり、惣領から浪人までについては在住手当金のみの支給となるから、在住の収入は元身分によって大きな格差が生じることとなる。なお在住手当・引越料等は、表1のとおりである。
表-1 在住手当・引越料等 |
1.当主(旗本、御家人) |
区分 | 手当(1ヵ年) | 引越料等 | |
300俵以上 | 手当金24両 | 12人扶持 | 100両 |
250~300 | 22 | 11 | 85 |
200~250 | 20 | 10 | 70 |
150~200 | 13 | 10 | 50 |
100~150 | 10 | 7 | 37両+厄介1人3両ずつ |
70~100 | 8 | 5 | 24 + 〃 2両 〃 |
50~70 | 7 | 3 | 22 + 〃 2両 〃 |
30~50 | 5 | 2 | 15 + 〃 2両 〃 *1 |
30俵以下 | 3 | 2 | 10 + 〃 1両2分 〃 *2 |
*1 外拝借金15両 *2 外拝借金13両 100~150俵以下の引越料等の内訳は「支度金」、「路用」、「賄代」。 |
2.部屋住幷次・三男、厄介(同) |
区分 | 手当(1ヵ年) | 引越料等 | |
100俵以上 | 手当金27両 | 15両+厄介1人2両ずつ | |
*1 50~100 | 22 | 10 + 〃 | |
*2 50俵以下 | 15 | 同上 | |
*1 但、100俵以下50俵以上 御目見以上厄介ニ候得は、本文御手当金25両被下、支度金其外共以下之者 同断。 *2 但、50俵以下 御目見以上厄介ニ候得は、御手当金17両被下、引越入用共以下之者 同断。 |
3.陪臣、浪人 |
区分 | 手当(1ヵ年) | 引越料等 |
陪臣 | 手当金15両 | 引越料 5両(外に厄介1人に付1両2分) |
浪人 | 10両 | 5両(同上) |
(幕末外国関係文書より作成) |
また、土地については、前出のとおり在住が「自力を以テ」荒地開墾する場合は地所を割渡し、在住中は「被下切」とし、作物の出来方により五~一〇年の鍬下年期をおいて年貢を収納することとした。いうまでもなく、自力を以てというのは、武士が自ら鍬を振って土地を開くのではなく、自費で農民を招募して開墾させることを原則としている。またもし退去する場合は、その地所を譲渡しても差支えないとされている。