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ケプロンの進言

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 開拓使顧問として招かれ、明治四年七月来日したケプロンはブレークやワーフィールドらに北海道の現地調査をさせ、その報告によって札幌の現況を知り、五年一月二日(陰暦四年十一月二十二日)付で報文を提出した。それによれば北海道の首都となる札幌は無尽の水力に恵まれているので、この水力を利用して「車師、鋳物師、大工等ノ如キ諸工場ヲ札幌ニ開キ、及ビ粉磨鋸材ノ器械ヲ設クヘシ。此等ノ業ハ庶人ノ手ニ委スルヲ至当ト為スト雖トモ政府ニ於テ之ヲ開設誘導セザル可カラズ」と、まず官営の資材生産工場の設置に加えてさらに生産工場の機械化こそが国の開化の基であると以下のように進言した。
現状ニ就テ観レバ、器械ヲ用ヒテ人工ヲ補益スルハ枢要ナラザルガ如シト雖トモ、熟々時勢ノ変遷ヲ考フルニ、器械力ヲ藉リ、以テ人工ノ価ヲ増スヲ望マザル者ナカルベシ。夫レ国ヲ利スルヤ、果シテ人工ヲ増シ、国用ヲシテ余リアラシムルニ在ラバ、器械力ヲ措テ他ニ求ムベキモノナシ。是ヲ以テ、人ノ筋力ノ価、他ノ諸動力ヨリモ廉ニシテ、路ヲ走ルノ駄馬ト其力ヲ競フノ間ハ、永久開化ノ基ヲ起スヲ得ベケンヤ
(開拓使顧問ホラシ・ケプロン報文)

 なお七年六月二十四日付の札幌に滞在中の報文では次のように指摘している。
当地ニ此器械ヲ設ルノ利益ナルハ、第一、他方ヨリ近ヨリ難キ大森林ノ便路ニ当レルナリ。第二、随意ニ水力ヲ使用シ得ルナリ。第三、許多ノ人民ヲ保ツベキ豊饒ナル耕地ノ中央ニ位スルナリ。第四、器械ヲ運転スルニ、数多ノ職工ヲ雇役スルヲ以テ、其日用ノ物ヲ供給スルノ農工商、此所ニ輻湊シ、以テ都会ヲ開クノ助ヲナスナリ。
右ハ直接ノ利益ナリト雖トモ、尚ホ間接ニ於テ数件ノ利益アリ。抑モ此工場ハ、本島ノ現術学校ニシテ、海外有益ノ巧思ヲ普ク全島ニ伝へ、器械ヲ以テ人工ヲ補益スルノ道(此国ニ最モ必要ナリ)ヲ実地ニ明示シ、且外国ニ於テ食料ニ充ルノ穀菜、及ビ果樹ノ島内ニ繁殖セルト、其用法トヲ、人民ニ教示スルヲ得ベキ講場トナルベシ
(同前)

 水力や豊穣なる大地に恵まれた札幌に、器械力による生産物加工工場設置の影響の大なることを述べているのである。