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岩村と安場の殖民局案

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 そこで論者が構想するそれぞれの「殖民局」の組織等を、各建議書によってうかがってみたい。まず岩村は提出した建議書に詳細な「北海道殖民事務局組織概要」を添付している。それによると殖民事務局の組織は、職制として総裁一人(一等官で皇族)、副総裁一人(二ないし三等官の勅任)、奏任官七人、判任官一四六人、等外吏四五人の総計二〇〇人とする(なおこの人員は奥羽数県の現今官吏の平均をとったと註記されている)。また局の分課案では、庶務課(兼農業課)、地理課、工業課、運輸課、調度課、会計課、それに東京出張所の六課一所で、それぞれの長に奏任官一人を配している。これらの組織をもって生産繁殖の全道波及を図るのであるが、さらに販路を開拓して物価の安定を得るため、資金を補給して一大会社の創設も必要としている。他方この局の財政は、北海道民費が九カ年間金八二〇万円、殖民連帯費(行幸費・鎮台費・警察費)同じく九カ年間一六三万一六〇〇円、総計九カ年間九八三万一六〇〇円とし、またその財源は士族授産金を原資とし、不足分を紙幣消却の差額余裕分をもって補うとするものであった。
 ついで安場の提示した北海道殖民局は、三県を廃して札幌に置き、内務省管轄の下に全道(ただし函館は本道の一大要衝地により府を置き市政を布くとして除外している)を所轄するものとする。その局長は「内地府知事県令ニ同シ」としているが、本道は内地とその制を異にすることができ、裁判事務を兼掌し、また一般成法にかかわらず土地適応の規則・方法を選定する等の、特別の権限の付与を考えている。財政は毎歳若干万円を定額とし、本道収税金をもって殖民局一切の費用に充て、一〇年を一期として経営するものとしている。なお付言すれば、開拓に当たり本籍人にのみ土地所有を認め、また移民保護は一切廃して「自己ノ資力ヲ以テ支弁シ得ヘキモノニ限リ移住開墾セシ」め、開墾地は五〇年以上一〇〇年以下の除租としている。