ビューア該当ページ

仏教各宗連合会の結成

876 ~ 878 / 1047ページ
 このような仏教演説会を含めた各宗派合同活動の主体は、この時期はあまり確固としたものではなかったようである。新聞広告によっても、成田山世話方の場合があり、また単に「会主」とだけ記せられたものもある。この中で、二十一年七月に行われた演説会は「札幌小樽有志共同会」の名で行われている。また二十四年十二月頃に、児谷玉鳳、龍山雷雲等が発起者となって札樽円融会を組織し、毎月仏教演説会を開くことを定めた。さらに二十六年二月に各宗寺院住職が会合、前年まで継続していた各宗寺院毎月一回会合し、各宗の教義上に関する会議を再興するなどを決議している。
 こうした一連の活動をふまえて、札幌寺院各宗協議所が組織された。同所規程は、まず第一条で「札幌各宗寺院和合同盟シ、茲ニ協議所ヲ設ケ、済世利生ノ行ヲ実施スルヲ以テ目的トス」(札幌各宗連合会 東本願寺札幌別院)とし、そのために各宗連合演説・慈善・教育事業を行うこととし、演説については隔月一回と定めた。さらに毎月一回常集会を開催することとし、その他の協力・親睦等についても規定を設けた。
 この協議所の設立時期は今のところ不明である。前掲史料には、別筆で「起草者高野日極」の書込があり、高野は二十二年暮から二十四年頃までその活動がたどれるから、これが事実とすれば設置は二十三、四年頃となる。
 このほか『北海道毎日新聞』には、三十年四月十八日付および三十一年一月十一日付で「札幌各宗同盟寺院」名による行事案内広告が掲載されているが、内容は不明である。また二十七年には北海道仏教会と称する団体が演説会・懇親会等を開いている。
 上記の経過を経て、三十二年に仏教各宗聯合会が結成され、五月二十日に大谷派三条説教場において発会式を行った。同会規程はまず第一条において「第一項 本会は仏教各宗寺院檀信徒の聯合を以て組織す、第二項 本会の目的は無比の国体を擁護し仏教の真理を発揚するにあり、第三項 本会は例日(月カ)第一土曜日第三土曜日午後七時より仏教講義並演説を開会す(中略)、第四項 本会会場は当分南三条大谷派説教所と仮定す、第五項 本会の講師および弁士は各宗有志僧侶中抽籤を以て其順序を定む(中略)、第六項 講義並演説は普通仏教を旨とし必ず一宗一派に偏せざるものとす(後略)」(北海道毎日新聞 同年五月二十一日付)とし、会員を名誉員(名誉または学識ある者)、正会員(一時金品寄付または毎月一〇銭以上寄付者)、賛成員(毎月五銭以上寄付)とし、役員は幹事二人(各寺院中より互選)、評議員若干名(正会員より選出)等を定めた。このほか小冊子の隔月発行及び将来的に慈善公共事業への進出も謳っている。
 これをみると、前記協議所規約と異なって、会員構成を僧職にとどまらず各寺院檀信徒までに及ぼしているのが最大の相違点であろう。しかし開会式において、中央寺住職の小松万宗が寺院総代、創立委員総代として祝辞を述べており、当然寺院側の主導でこれが結成されたとみられる。と同時に、同会の演説で、この七月の内地雑居と仏教徒の覚悟をうながしているところから、この連合会がやはりキリスト教対策を大きな柱としていることをうかがわせる。