ビューア該当ページ

札幌仏教青年会の成立と活動

878 ~ 879 / 1047ページ
 二十二年七月、札幌仏教青年会が設立された。『北海道毎日新聞』(七月二十三日付)に掲載きれた設立趣旨書の要旨を紹介すると、まず文明を有形・無形に分け、道義徳性は無形とし、それは宗教の支配に属するとした。そして現在は有形的文明は日に進歩するが、無形的文明は日毎に萎微するとし、これを挽回するのは唯一仏教しかなく、「同感の者時に相合同して互に仏教を研究し、又酒は三業悪行の媒介を為すが故に堅く之を禁し、以て十善を修め四恩に報ひ、併せて仏教徒諸般の悪風を匡正して以て無形的文明の萎微衰退を挽回し、国を護り人を利し真仏教たるの本分を尽さんことを盟結せり」とその目的を明らかにした。すなわちここでは無形的文明である仏教を衰退中と規定し、その原因を飲酒等仏教徒諸般の悪風すなわち内的要因に求め、これを匡正することがそのまま護国等につながるとの認識を示している。
 同会の活動は、大別して常集会と講演会とに分けられる。常集会は僧職を招いて仏教の教義を聞く性格が強いが、同年十一月を第一回として開催された演説会は、会員および客員等としての僧侶数人によるもので、多数の聴衆を集めていずれも盛会であった。中でも同年十二月開催の第二回演説会は禁酒に関するものを主とし「飲酒の害」、「仏教と禁酒につき所感を陳ぶ」、「時将に禁酒を説くの不幸に至らんとす」等の演題が並んでおり、また二十三年二月には主に廃娼問題が取り上げられ、同年三月の第四回演説会にも「廃娼論」、「矯風に就て」という題名の演説があった。このほか前掲新聞(二十二年八月二十四日付)には同会会員自直居士の名で「飲酒僧侶ニ禁酒ヲ勧告ス」という一文が掲載されている。設立趣意書の説く仏教の内部からの改善という目的に沿った活動といえよう。このほか二十二年八月頃に、同会付属の少年教会があったが、これは前述の西本願寺別院付属のものと同一団体と思われる。

写真-5 札幌仏教青年会第四回演説会の広告
(北海道毎日新聞 明治23年3月7日付)

 しかしこの会の活動は、二十四年五月の三大吉祥会挙行を最後に新聞記事から見当たらなくなる。おそらく、この頃に活動を停止したものと思われる。