後に編纂される統計書の項目と同じではないが、札幌区でも農商務通信や産業に関する定期統計報告などのために統計表は作成されていた。また三十三年から出されている『札幌区事務報告』をみても、係ごとの受発文書表、教員異動表など様々な表が載せられている。これらを見てもわかるとおり、札幌区ではすでに様々な統計表は作成されていた。しかしそれらは、「従来其ノ方法ノ完備シアラサリシハ遺憾トスルトコロナリ」(札幌区事務報告 自明治三十九年十月至同四十年九月)というように、正確なものとは言い難かったようである。そのため四十年五月一日から統計規程調査委員を組織し、「将来区行政ハ勿論其ノ他百般ノ事業ニ対シ資スル所少カラサル」ことを見込んで、統計方法の調査をすることにした(同前)。
この調査の結果、どのような統計書を作成しようとしていたのか確認できないが、この頃出された統計書類には次のようなものがある。先ず『札幌区事務報告』(自明治四十四年十月至大正元年九月)では、「前年ニ準拠シ明治四十四年五月編纂同六月十五日印刷ヲ了シ各方面ニ配布シタリ」とある。また現在確認できている『札幌区統計(書)』の内で、最も古いものの凡例では、四十三年三月の日付(札幌市中央図書館蔵)である。この二つのことから、少なくとも四十三年には統計書を印刷・配布していたことが推察できる。しかし統計書とは別に『札幌区状態一班』(同蔵)が、三十九年九月調べとして印刷されている。また『札幌一覧』(同蔵)が四十一年九月に発行されている。この二つは要覧や市勢一覧の系統に当たるが、正式な統計書編纂以前であるから、統計書の印刷発行と同一視することもできる。
『札幌区統計』(明43発行)は、大項目二二(位置及地勢、沿革、土地、気象、戸口、教育、衛生、社寺、兵事、警察及警備、窮恤、慈善及褒奨、保険、農業、蚕業及畜産、商工業、金融及貯蓄、通信及運輸、交通及土功、財政、区政及議会、官署)、小項目一四六である。この統計書は、四十三年発行分は『札幌区統計』、四十四~四十五年は『札幌区統計書』、大正二年以降は『札幌区統計一班』となる。途中経過は不明だが、現在は『札幌市統計書』である。