四十年二月「社会ノ進歩ニ伴ヒ地方自治共同ノ事務亦漸ク複雑ヲ来シ之カ施設ハ曩日ノ手段ニ依ルヲ許サス少ナクモ之カ状勢ヲ数字的ニ明瞭ナラシメ以テ其ノ方針ヲ定ムルノ基礎トナサヽルヘカラス」という目的で、区勢調査の方法の考究に取りかかった。顧問を札幌農学校教授高岡熊雄に委嘱し、助役河田猪三郎を委員長に、書記五人を委員とした。調査の結果、高岡熊雄は「区ノ現在ノミナラズ進ンデ之ガ遠キ将来ヲ慮リテ施政者ノ進路ヲ指導スルニ足ルベキ調査研究ヲナサント欲セバ須ラク更ニ一歩ヲ進メ根本的ニ区ノ経済及ビ社会的状態ヲ調査スルノ必要」を認めた。
そして四十一年「札幌区区勢調査条例」(条例第三号 7・26公布)、「札幌区区勢調査規程」(訓令第五号 7・29)で区勢調査のための諸規程を制定した。さらに「監督委員心得」(訓令第七号 10・12)、「調査員心得」(訓令第八号 10・12)を制定し、職務内容を事細かに示した。また同年八月一~三十一日、四十二年一月六~十五日の二度の準備調査の後、三月一日に本調査が実施された。
調査の大項目は、氏名、所帯主との続柄又は所帯主もしくは所帯主との関係、男女の別、出生の年月日、縁事上の身分、結婚の年、職業名およびその地位、読書力、障害者の種類および原因、宗教、出生地、原籍地または国籍地、来札の年、一時現在者の常住地、一時不在者、住地および住家の状態の一六項目である(札幌区区勢調査について詳しくは、海保洋子 明治期札幌における社会調査──明治四十二年札幌区区勢調査を中心に──を参照)。