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道庁の都市計画の調査方針

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 一方道庁では、都市計画の調査を開始する際の札幌・小樽・函館三市の現状を、道庁内部では次のように把握していた。それを札幌を中心に記述すると次のようになる。
 建設当時の三市は相当考慮して計画を進められていたが、今日では目前の急務に追われて乱雑な発展になっていると考えていた。そして札幌市については、豊平川に沿い工業都市として計画されたように思われるが、その後の水運の便が予期に反して発達せず、現今の状況となっているとする。その札幌の状況について、次のように指摘する。現在人口一三万五四五九人(十二年末)、総面積七四〇万坪、山川を除外する市街地建設面積六九七万六〇〇〇余坪で、人口一人当たり約五一坪である。地域の状況としては市街の発展にともない不規律に各種の建築物が建設されたため、工業・商業・住宅等が混在し、市街の衛生・保健上危険な状況となっている。家屋建築の状況についても、当初において街路境界線や建築線を無視し乱雑に建築されたため、平面的にも立体的にも凸凹甚だしく、都市の外観は別問題としても交通上支障を来しつつある。家屋は掘立て藁葺きや柾葺き木造の家屋から、亜鉛板木造家屋に変化したのは進歩である。しかし耐火建築物もあるにはあるが、火災の被害は計り知れない。火防設備については、市内を貫通する火防水路を設備していることと、道路の幅が相当考慮して計画されていることは、他府県の小都市にはない美点である。上下水道の設備は、早くから設備のある函館や小樽に対し、札幌はいたるところに井水が豊富で水道施設の必要を感じなかったため、水道計画が遅々として進まなかった。下水道については、三市とも見るものなし。鉄道と市街地との関係については、市街の中央に鉄道が敷設されて、道路との交叉に見るべき設備がないため、市街の発展が片方に偏り、不自然な発展をする原因になっている。
 道庁では、このような現状把握に基き都市計画区域を設定するとして、都市計画の調査方針を人口密度、過去の人口の増減、地域制、道路の舗装、道路網及び道路幅員、防火地区、公園官衙、その他の計画として、上下水道、港湾設備、都市に対する鉄道設備、河川の改良、橋梁の設備等をあげている。そして各都市の現状や調査のための一般的原則などを示している(以上大正十三年道内重要事項調査書)。各都市では、このような方針に基づいて調査を行った。