昭和十一年秋の道東の
陸軍特別大演習に伴う道内行幸の警衛警備では、「一面ニ於テハ警戒ヲ厳ニシテ何等ノ事故ナキヲ期スルト共ニ、他面ニ於テハ民衆ニ対シテ成ル可ク広ク奉拝ノ赤誠ヲ捧グルニ遺憾ナカラシムル」(道庁警察部 警衛勤務ニ就テ)ことを目標にした。とくに前者における間接警衛が重視され、特高・外事機能が総動員された。
札幌署の特高・外事係を中心に道内・他府県からの応援を得て、
札幌への行幸時には私服の警衛部隊だけでも三七一人が配置された。その視察と警戒の対象は「思想上の要警戒人物又は朝鮮人」で(以上、
野村儀平〔特高課長〕私服関係の警衛警備計画の概要)、八月に作成された『特高関係要警戒人物一覧簿』にもとづき、「監視」「尾行」「検束」という措置がなされた。
札幌署関係では六四七人が載せられている。さらに行幸中の静謐を保持するためとして労働・
小作争議などの「各種紛争議の未然防止」も図られ、社会運動の一層の逼塞化が促進された。また、外事警察の面からも「防諜意識の普及徹底」が試みられた(昭和十一年
陸軍特別大演習并地方行幸
北海道庁記録)。
写真-4 行幸警備の警衛警察官