保導委員は、自らが担当する区域内の全世帯を対象として、その生計状態から「要保護者」の実態の割り出しに努力した。
札幌市がまだ区の時代の大正十一年二月、
北海道庁社会課の社会事業施設参考資料調査の委託を受けて、
札幌区
細民調査を実施したことは市史第三巻第七章でも述べた。この時点での区内細民は、居住地五カ所、九二戸、二七五人と確認された。
ところで
札幌市は昭和二年、市になってはじめて保導委員四〇人を動員して細民の実態調査を実施した。この調査では、(甲)救護を必要とするもの、(乙)一朝生活中心者に事故が生じた場合たちまち救護を要するもの、の二段階に分けて行った。その結果、細民の居住区域は甲種が一二カ所、五七世帯、一八六人、乙種が一五六世帯、五三五人の合わせて二一三世帯、七二一人にもおよぶことがわかった(表27)。これは五年前の調査に比べ、世帯数では二・三倍、人数では二・六倍の増加、また居住地区も広範囲に広がったことを示している。次に、甲種の職業別および収入状況を示したのが表28、29である。五七世帯中
もっとも多いのが日雇、次に屑拾い、職工、警火番、袋貼で、あとは人力車夫、附添婦等となっている。収入においては、収入無しが三一世帯と半数以上におよぶことは、まず貧困度の高さをうかがわせる。平均しても一五円から二〇円くらいであるから、その日の糧を稼ぐのがやっとといった、かろうじて生活しているものといえよう。しかもこれらの人びとは、貧困という経済的条件ばかりではなく、五七世帯中三八世帯が何らかの疾病者、老弱者であったことから、いろいろな要因が重なっての現象である。細民居住区域は、単なる「貧困者」の問題にとどまらず、住宅環境や衛生環境が劣悪であることからも、都市社会問題であった。全国的に、これらの細民の人びとに対し生活状態を等級別にみた「方面力ード」からくる「カード階級」という熟語を誕生させた。
甲(男33・女24世帯) | 乙(男116・女40世帯) |
豊平 | 10世帯 | 豊平 | 83世帯 |
白石 | 2 | 白石 | 1 |
苗穂 | 4 | 苗穂 | 24 |
東小学校附近 | 12 | 東小学校附近 | 21 |
製麻会社附近 | 13 | 麦酒会社附近 | 6 |
豊水小学校附近 | 2 | 製麻会社附近 | 8 |
鉄北 | 4 | 鉄北 | 3 |
市立病院附近 | 1 | 市立病院附近 | 1 |
師範学校附近 | 3 | 師範学校附近 | 2 |
山鼻北部 | 3 | 山鼻北部 | 5 |
山鼻南部 | 1 | 山鼻中央 | 1 |
遊園地 | 1 | 山鼻南部 | 1 |
計 | 57世帯 | 計 | 156世帯 |
186人 | 535人 |
職種 | 人数 |
日雇 | 13人 |
屑拾い | 5 |
人力車夫 | 1 |
警火番 | 2 |
職工 | 3 |
錺職 | 1 |
袋貼 | 2 |
附添婦 | 1 |
青物魚商 | 1 |
按摩 | 1 |
髪結 | 1 |
飴売 | 1 |
農 | 1 |
大工 | 1 |
収入 | 人数 |
30円以上 | 1人 |
30円以内 | 1 |
25円以内 | 7 |
20円以内 | 4 |
15円以内 | 5 |
10円以内 | 1 |
5円以内 | 4 |
なし | 31 |