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屎尿処理

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 だが、昭和五年改正になった汚物掃除法では、汚物処理につき市は手数料または使用料を掃除義務者から徴収しうることが盛り込まれ、住民は都市の自治のためには応分の負担義務を受け持つことが求められる段階にいたった。札幌市では、七年一月一日改正汚物掃除法を施行、屎尿処理の市営化とともに市民には応分の負担義務を求めていくこととなる。
 札幌市三万余戸の一日の屎尿量は、八〇〇石にものぼった(北タイ 昭5・12・23)。七年、市では改正汚物掃除法施行にあたり、市営を原則に汲取者別戸数を調べたところ、組合六二一、会社四四一、農家一万九八八七、その他二八一六と、農家がもっとも多く、しかも料金も月二〇銭~三円と一定していなかった(札幌市事務報告)。このため衛生組合聯合会は八年十一月、市に直営化と料金の値下げを陳情(北タイ 昭8・11・18)した。また一方、札幌警察署では会社汲取をいったん許可したものの撤回したので、これに対し業者は「死活問題」と汲取馬車四〇台を連ねて抗議デモを行う(北タイ 昭8・11・30)という具合に、屎尿処理問題をめぐって紛争が続いた。
 十一年五月一日より、市、衛生組合、町村農事実行組合との間で、市民の負担軽減、衛生の確保、農家の汲取り円滑の三項目の契約書を取り交わし四年ぶりに解決をみ、一部市営化された。しかし、戦時徴用のため人馬の払底により汲取りの円滑を欠いたため、十四年十二月一日より農事実行組合の汲取りを廃止し、札幌清掃社札幌衛生社の二社に処理を委託するとともに、料金を戸数割納税額標準の八等級(一〇銭~一円)に分け、はじめて税額別料金を導入した(北タイ 昭14・12・3)。
 やがて、十六年十二月一日からは、札幌市民二三万人の要望から屎尿汲取りの全面市営を実施することとなり、このため従来委託の二社を四万八八〇〇円で買収した(北タイ 昭16・9・10)。こうして、札幌市ではこの問題に取り組みはじめて一〇年の歳月を費やして、ようやく屎尿処理の市営化が実現した。その場合の市民の負担額は、甲、乙、丙の三地域別とし、それぞれ一桶一五銭、一三銭、一〇銭となっていた(北タイ 昭16・11・29)。市では臨時馬車二五台、常置馬車七二台の計九七台を全市に動員、全市を九浄化区域に分け、一定台数の汲取馬車を配置して屎尿禍の一掃につとめた(北タイ 昭16・12・12)。