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札幌進駐への準備

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 「われら護らん郷土 きのふ戦闘隊結成」(道新 昭20・8・9)という最終決戦の準備も、八月十五日以降は急速に占領への対応に傾いた。米軍の進駐に向けた市民生活の統制の一つとして、警察部特高課長は「戦後復興にあたるわれわれの文化度をまづ衣生活の面からも高めてゆくことは絶対に大切である」と述べて、「男子の着流し、女性のスカート姿」に干渉する(道新 昭20・8・28)。また、新聞が「もっと綺麗に清掃しよう」と呼びかけるのも、現状の乱雑さでは占領軍に「好感を与へまい」という憂慮からだった(道新 昭20・9・16)。新聞には、「進駐軍迎へる道民の心得」として、「服装、態度は端然と」などの注意事項とともに、米軍将兵の階級章の判別法も載せられた(道新 昭20・9・26)。
 さらに札幌市では商店や一般家庭に「進駐軍将兵へのお土産供出」を呼びかけた(道新 昭20・9・26、9・28)。人形や扇子、羽子板などが集められた。市役所のベランダや郵便局のトラックにも英字が記されるほか、横文字の道標も設置されはじめた(同)。
 市の教学課では十月二日、「米国の風俗習慣について理解を深めよう」と講演会を開いている。市内の国民学校の校長が参集し、「進駐軍を迎へる種々の注意事項を児童に徹底せしめて事故の防止をはかる」目的もあった(道新 昭20・10・3)。さらに十月中旬からは一般市民向けの英語会話講座を開設する。
 進駐の前後には、いくつかの英会話集が刊行されている。その一つ、道庁の主任通訳堀口光男著の『進駐軍を迎ふる米語会話』(昭21)は、「基本会話」などのほか、「外人の習慣、食事作法、兵語、陸軍階級表、役所名」なども入った実践的な内容となっている。