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工場適地調査では、札幌の主要一〇工場につき原材料と製品の流通ルートおよび輸送手段を調査している。表8にその結果をまとめた。このころは札幌の貨物取扱駅のうち桑園、苗穂、東札幌が三大拠点であった。資料の制約から鉄道とトラックの振り分けができず便宜的に両方に数値を入れたもの(表中の( )の部分)があり、また毛織物は軽く木材は重いなど物資の種類により重量が極端に異なるため、あえて表には合計欄を設けなかったが、一応の傾向を検討しておこう。原材料搬入の合計は八万九七四六・六トンである。そのうち鉄道小計は四万一八一一トン、トラック小計は五万七六二四・六トンである(重複を含む)。単純に原材料合計に対する割合を求めると鉄道四六・六パーセント、トラック六四・二パーセントとなる。一方、製品搬出では鉄道小計は三万一八二二・五トン、トラック小計は一万八七四三トンで鉄道六二・九パーセント、トラック三七・一パーセントであった。原材料と製品とで結果が違うが、これは東洋木材工業が原材料をトラックで搬入し、製品を鉄道で搬出していることに多くを負っている。
表-8 主要工場の原材料・製品輸送(昭和38年) (単位:トン) |
工場 | 原材料の搬入 | 製品の搬出 |
鉄道 | トラック | 合計 | 鉄道 | トラック | 合計 |
桑園 | 苗穂 | 東札幌 | 小計 | 桑園 | 苗穂 | 東札幌 | 小計 |
雪印食品工業 | 7,186 | | | 7,186 | 245.6 | 7,431.6 | 4,278 | 1,286 | | 5,564 | | 5,564 |
| 琴似 | | | | | | 琴似 | | | | | |
札幌酒精工業 | 13,140 | | | 13,140 | 8,000 | 21,140 | 2,100 | | | 2,100 | 3,920 | 6,020 |
宝酒造 | | | 1,444 | 1,444 | 1,175 | 2,619 | | 411 | 1,716 | 2,127 | 25 | 2,152 |
| | 市場 | | | | | | | | | | |
日本冷蔵 | 2,000 | 2,185 | | 4,185 | 1,540 | 5,725 | 1,150 | | | 1,150 | 4,000 | 5,150 |
北日本毛織 | | | 945 | 945 | (780) | 945 | | | 600 | 600 | (100) | 600 |
聯合紙器 | | | 10,623 | 10,623 | (8,909) | 10,623 | | 468 | 6,788 | 7,256 | 3,000 | 10,256 |
北日本ゴム | | | 2,962 | 2,962 | 2,907 | 5,869 | | | 663 | 663 | | 663 |
豊平製鋼 | | | 1,230 | 1,230 | 4,803 | 6,033 | | | 882 | 882 | 4,346 | 5,228 |
| | | | | | | 手稲 | | | | | |
東洋木材企業 | | | | | 26,348 | 26,348 | 11,480.5 | | | 11,480.5 | 190 | 1,670.5 |
| 札幌 | | | | | | | | | | | |
札幌トーヨーゴム | 96 | | | 96 | 2,917 | 3,013 | | | | | 3,162 | 3,162 |
通産省企業局工業立地指導室,北海道『昭和39年度工場適地調査A札幌・小樽工業地区』昭和40年 |
1 | 北日本毛織,聯合紙器のトラックの数値は,資料の不備のため鉄道の数値と分離できないので,( )を付し,鉄道の内数とした。 |
2 | 札幌トーヨーゴムの搬入に「札幌」とあるが,札幌駅は貨物の取扱駅ではないので誤りだが,原資料のまま掲載した。 |
原材料搬入はトラックが多いが、その多くは国道五号線経由の小樽港から工場までの輸送である。札幌・小樽間は鉄道による貨物輸送はなされていたが、おそらく距離が短く、駅での積替えの手間を省くためにトラック輸送が選択されているのだろう。また、表中の鉄道輸送についても各駅から工場までの間は、引き込み線をもつ工場は別として、トラック輸送であった。先に工場立地が郊外へ伸びていることを指摘したが、それらは必ずしも鉄道沿線ではなかった。トラック輸送を前提とした工場立地もこの時期の特徴であった。
工業地帯として発展するためには、社会資本(インフラストラクチャ)の整備とともに機械・設備の保守・修理を行える体制が必要になる。札幌の主要二七工場につき修理の状況をまとめたのが表9である。修理の発注先を分けると自家修理三八・一パーセント、地元発注四九・三パーセント、道内発注六・四パーセント、道外発注六・二パーセントという結果であった。自家修理と地元発注が大部分であり、工場の増加にともない多様な機械工業の存在が必要となってくることを示している。もっとも修理が自家、地元で行われるというのは、機械設備が工場に固定されていることを考えると当然である。札幌の機械工業は、戦前から発達をとげており、他の産業の設備を受け持つという役割は果たしていた。しかし機械設備の新規購入となると道外品(=内地品)の後塵を拝していたのである。
企業名 | 自家修理 | 地元発注 | 道内発注 | 道外発注 | 地元発注機械 |
日本鉱業豊羽鉱業所 | 622 | 807 | | | スラッシャー,ドラムウォッシャー,ボイラー |
雪印食品工業 | | 90 | 5 | 208 | 乾燥機,冷凍機,フリーザー,プレート刃,M8シーマー |
古谷製菓 | 350 | 60 | 90 | 70 | 製菓機械 |
サッポロビール | | 68 | | 166 | 配管,ボイラー,精撰麦ホッパー,麦計受槽 |
日本清酒琴似工場 | | 85 | | | 冷却機,コンベア,袋詰機 |
高橋水産 | 27 | 73 | | 15 | 冷凍機,製氷機,電動機 |
宝酒造 | 3 | 42 | | 16 | ネオン塔,貯蔵槽 |
明治乳業 | | 256 | | | 市乳アイスクリーム製造設備 |
林兼水産工業 | | 66 | | 13 | ボイラー,ホイスト,モーター |
日魯漁業 | | 95 | | | チョッパー,殺菌機 |
日本冷蔵 | 4 | 19 | | | エレベーター |
北日本毛織 | 982 | 18 | | | モーター,ブラス植替え |
日本ハニコムボード | | 40 | | | ボイラー |
札幌製紙 | ? | 696 | 539 | | 製紙機械 |
聯合紙器 | 53 | 45 | | 50 | コルゲーター,ボイラー |
北海道新聞社 | 10 | 44 | | 15 | 輪転機,コンプレッサー,オートプレート,シェーパー |
毎日新聞北海道発行所 | | 293 | | | モノタイプ,活字鋳造機,輪転機,写真製版機 |
中西写真製版印刷 | | 18 | | 15 | 凸版印刷機 |
山藤印刷 | | 231 | | | 平版オフセット,ストップシリンダー |
北海酸素 | 40 | 18 | | | 空気圧縮機,酸素圧縮機,配管修理 |
北日本ゴム | | 209 | 13 | | ロール機,モーター,減速機,裁断機,カレンダー,油圧ポンプ |
北藤ゴム | | 60 | | | ゴムロール機 |
札幌生コンクリート | | 90 | | 59 | ベルトコンベアー,スクリューコンベアー,ポンプ,圧縮機 |
太平洋建設工業 | 40 | 492 | | | ボイラー,パンチャープラント,計量機,ベルトコンベアー,粉砕機 |
豊平製鋼 | 1,743 | | | | |
スター農機 | | 43.2 | | | コンプレッサー |
北海道瓦斯 | | 1,050 | | | 圧送機 |
通産省企業局工業立地指導室,北海道『昭和39年度工場適地調査A札幌・小樽工業地区』昭和40年 |