行政と組合の対立が裁判にまで及んだこととして、全国学力一斉テストがある。文部省は昭和三十一年から、小・中・高校を対象とする全国学力テストを実施した。その目的は児童・生徒の学力実態を調査し、学習指導や教育条件の整備に役立てることにあった。
北教組は「一日だけのテストの結果が指導要録に記入される」「コンクール化して現場に悪影響を与える」と反対した。反対運動が激化したのは、三十六年に中学校二、三年全員を対象とし、「一斉」にしたからである。全道中学校校長会も「基本的には反対する」という態度をとったが(道新 昭36・9・6)、十月二十六日に実施に移された。実施に際しては、各地で校門前の押し問答になった。組合の行動を「柔軟性を欠いたものだ」とした札幌市中学校長会は、会員三六人中三三人が
北教組から脱退するという事態もおこった(道新 昭36・10・28)。それより一月前の九月二十六日に行われた小学校と高等学校の抽出による学力テストは、市内の苗穂小学校、豊羽小学校、札幌啓北商業高等学校を含めて、全道で小学校三七校、高等学校四校において中止になった。
道教委は校長・教諭らを懲戒処分としたが、組合は提訴した。その後いわゆる「
学テ裁判」が続くことになる。中学校の一斉学力テストは三十九年で終わり、学力テストそれ自体も四十一年に終了した。
学力テストの成績は、北海道全体では全国の最低レベルが続き、札幌市は全国平均レベルであった。
市教委は四十年から
教科指導員制度を新設して(道新 昭40・3・8)、学力向上対策をとった。表6は、四十一年六月に実施された小学校と中学校の学力テストの平均点である。札幌市の小学校では算数を除き国語と音楽で、中学校では国語・数学・技術・家庭のすべてで全国平均を上回っているが、全国商業市街地域と比較するとほぼ同様である。
表-6 昭和41年度の全国学力テストの平均点(100点満点に換算したもの) |
| 小学校六年 | 中学校一年 | 中学校三年 |
国語 | 算数 | 音楽 | 国語 | 数学 | 国語 | 数学 | 技術 | 家庭 |
札幌 | 59.6 | 35.5 | 60.4 | 74.8 | 47.5 | 51.4 | 50.8 | 54.5 | 49.0 |
北海道 | 52.4 | 32.0 | 52.0 | 62.6 | 39.5 | 40.4 | 34.0 | 44.0 | 39.5 |
全国 | 58.4 | 39.5 | 55.8 | 67.2 | 44.5 | 45.6 | 43.2 | 48.5 | 46.0 |
全国商業市街 | ― | ― | ― | 72.8 | 48.0 | 50.4 | 51.4 | 51.3 | 50.2 |