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『北海道文学』と『位置』

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 昭和三十七年に研究と評論を中心とする雑誌が相次いで刊行された。十月創刊の『北海道文学』は木原直彦が編集発行人となり、隔月刊で四十四年十月まで二八冊を出している。北海道文学に関する評論、研究、随筆を主とした雑誌で「自作・自著を語る」には長見義三寒川光太郎中沢茂佐藤喜一などが登場している。主な作家論として、鳥居省三原田康子論」、高野斗志美佐藤喜一論」、加藤愛夫「辻村もと子覚書」などが載った。木原直彦北海道文学ノオト」、安東璋二北海道文学とは何か」、武井静夫「地方文学史は可能か」、林義実「『雪をんな』の周辺」などは北海道文学を研究するための基礎的文献である。十一月創刊の『位置』は藤女子大学内「位置」の会発行。文学における北海道的なるものを追求するとともに、独自な方法意識による研究、評論を掲載して全国的に注目された。大炊絶(小笠原克)の久保栄論、今井泰子の石川啄木論、山田昭夫の有島武郎論、亀井秀雄の平野謙論、野坂幸弘伊藤整論、神谷忠孝の森山啓論などが発表され、四十二年十月まで八冊刊行して休刊した。