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諸教派の戦後進出

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 札幌においても昭和二十年代後半(一九五〇年代)、戦前からの歴史を持つ教会は、キリスト教ブームによって外に向かって活動を拡大したが、ブームが沈静化した後、再び教会内部の充実に向かった。また新たに札幌に進出した各教派は、教会を新設し、活動の定着をめざした。図1は、札幌の人口増加(後に合併する町村を含む)とともに、市内の教会数が増加していく様相を戦後二五年間について示したものである。教会数の典拠としたのは、昭和四十三年(一九六八)まで隔年に刊行され、以後は毎年の刊行となった『基督教(キリスト教)年鑑』である。隔年刊行であったため、実際の教会設立年次とは多少の時間差は免れないが、趨勢は明らかにできよう。もっとも、ここに掲載されている〝教会〟とは何かという定義となるとそれぞれの教派によって考え方を異にしている。ここでは、それぞれの教団の報告どおりに年鑑編集部が教会一覧に挙げたものを数えて集計した。

図-1 札幌市内の教会数

 表4では、日本基督教団から諸教派の離脱と再建があり、キリスト教ブームが「落着」したあと、二十九年~三十一年頃から、新たな教派の札幌進出がみられる。さらに三十五年~三十七年には、従来の教派が新規に伝道地を開拓し教会を札幌に新設する一方、新たな教派の進出も顕著となり、教会数のうえで並行する様相が認められる。
表-4 教派別の教会数推移(昭20~45年)
No.年次1900年戦前48505254565860626466686970
教派の区分昭和2023252729313335373941434445
1-1日本基督教団855544556610121313
1-2戦前来の教派(日本基督教団を除く)145711131515151616161616
1戦前来の教派の教会数
小計
99101215172020212226282929
2戦後進出のプロテスタント諸教派23101322303233353939
3その他の教派1111143222
4カトリック教会44444444567777
5ハリストス教会11111111111111
合 計1414151924333948586570737878
『基督(キリスト)教年鑑』1948(昭和23)年版~1970(同45)年版(1968年版までは隔年刊行)。
同年鑑に掲載されている限り,教会,伝道所,集会所を区別せずにすべて数えた。年鑑に掲載漏れがあっても修正せずに表示した。

 教派別に見ると、新・日本基督教会の離脱によって全道的に教会数が半減した日本基督教団は、二十九年から「北海道特別開拓伝道」(北拓伝)を発足させ、同教団所属の教会が存在しない地域へ計画的な伝道を開始した。もっとも札幌では、戦後独自に伝道を開始した月寒教会に続き、北拓伝が、その五カ年計画の後半、三十一年頃から既に教会のある道内主要都市の郊外にも展開した結果、市内にも東札幌・琴似(現琴似中央通)両教会を生みだした。さらに三十九年には札幌教会が計画した真駒内・麻生・厚別という住宅団地に伝道所を開設するなどのことがあって、四十年代前半には札幌の各教派のなかで最も多い教会数となった。
 聖公会は、二十九年以降、みすまい会衆などを新たに加えたが、最終的にこの時期では、二十七年設立の聖ミカエルはじめ、聖マーガレット・大学センターを加えた四教会となった。福音ルーテル教会は、二十四年北講義所(現札幌北教会)を開設し、二十六年に新発足した日本基督教会は、戦前来の伝道地、琴似・桑園・豊平各教会に加え、三十六年には発寒伝道所を開設するなど教会数を増していった。
 新来のプロテスタント教会では、日本ルーテル教団が二十七年、大通にユースセンターを開設し、日本バプテスト連盟も同年に伝道を開始して、札幌・平岸・白石と教会数を増した。イエス之御霊教会はこの時期の最後には一一教会となっているが、教会数の挙げ方が他教派とは異なるようである。この時期の終わりの方(昭44~45)には、北海道福音協議会の教会が含まれている。しかしすでに三十年には北栄キリスト教会が設立されており、年鑑への掲載は実態より遅れている。
 以上のほかに「戦後進出のプロテスタント諸教派」では、日本ナザレン教団、日本バプテスト・バイブル・フェロシップ(日本聖書バプテスト連盟)、日本イエス・キリスト教団、イムマヌエル綜合伝道団、日本ホーリネス教団、基督兄弟団、基督聖協団、日本アッセンブリー教団(日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッド)、聖イエス会、日本ユナイト・ペンテコステ教団、クリスチャン文書伝道団(CLC)、日本メノナイト・キリスト教会協議会、東洋ローア・キリスト伝道教会、福音バプテスト教団などがあり、ほかにどの教団にも属さない単立教会と無教会の集会があった。「その他の教派」とは原始福音・神の幕屋グループ、末日聖徒耶蘇基督教会(モルモン教)の教会である。
 カトリックは、三十七年から徐々に教会数を増加し、この時期の最後では、北二十六条・月寒・真駒内を加えた七教会となっている。ハリストス正教会の教会数には変りがない。
 このように、既存の教派では、市周辺の住宅地への伝道を意図して新たな教会を配置し、新しく進出する諸教派も、周辺地域に教会活動を確立させる動きを見せている。札幌の人口増と教会数の増加とは、必ずしも比例しないが、三十七年頃までは札幌全域の人口増加率に教会数の増加の動きがほぼ添っている。しかし三十年代後半(一九六〇年代)以降は、両者の差が拡大する。これは急激な人口増に教会数の増加が即応しなくなったことを意味していよう。