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採鉱生産体制とコラム浮選機導入

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 昭和五十六年(一九八一)二月、坑内排水・主要扇風機・用水・圧気設備等の合理的運転管理のために綜合監視制御盤が採鉱事務所に設置され、六十一年十二月にはレールのいらない坑内用重機類を使用する、いわゆるトラックレス化による出鉱体制が整い、平成十年十一月、トラックレス坑道が全面開通した。
 粗鉱生産量は昭和四十八年度以降、表72のように推移している。すなわち、四十八年度の約四九万トンから翌年には約三九万トンに減ったものの、五十年代に入ると四〇万トン台に復帰して同年代の終わりには四〇万トン台後半に増加し、六十三年に五〇万トン台となり、平成三年(一九九一年)の約五五万トンのピークを迎えた。その後は逓減傾向の中で増減を繰り返し、十五年は約三九万トンとなっている。なお埋蔵鉱量の推移は表73のようである。
表-72 豊羽鉱山粗鉱生産量(昭和48年度~)
年度鉱量
(t)
亜鉛硫黄インジウム
品位
(g/t)
含有量
(kg)
品位
(%)
含有量
(t)
品位
(%)
含有量
(t)
品位
(%)
含有量
(t)
品位
(%)
含有量
(t)
品位
(g/t)
含有量
(kg)
昭48487,3777938,6692.5012,1826.3831,10811.4855,937
 49391,1987730,0572.499,7276.8126,63611.4844,925
 50420,3178636,0142.239,3596.6828,09111.7349,284
 51403,2659437,8752.399,6246.7627,27311.8447,729
 52416,75110443,2222.289,5186.9528,95912.8053,338
 53417,03612451,6812.6711,1517.9333,06812.8653,638
 54394,38112448,8852.7210,7098.0831,85312.6449,843
 55403,71413253,2463.1712,8149.0736,60812.8952,053
 56413,89113857,1682.7411,3448.7836,32914.1858,672
 57440,58815568,2622.4710,8678.8939,18114.9165,713
 58461,82412758,7812.2110,2298.3838,71515.6372,162
 59464,80514567,4492.4111,1937.1733,31314.1065,514
 60470,62818185,3182.4011,3187.6636,02813.0961,601
 61489,900253124,0852.4812,1619.4846,43819.2394,185
 62480,089287137,6831.718,2058.4040,31021.55103,456
 63500,645255127,4272.1010,5099.8649,37221.72108,745
平 1515,97516685,5591.558,0138.6744,74521.75112,223
  2530,67916889,0721.869,8548.9947,68520.59109,277
  3548,044214117,1881.8510,13310.2255,99022.64124,0760.341,861
  4541,022213115,1862.0811,24510.9959,44924.31131,5320.321,705
  5474,02719693,0652.2210,53611.3053,55624.67116,9500.411,922
  6454,28221597,7242.4411,07313.3760,72222.57102,5130.632,856
  7468,89919792,4402.3010,80013.3862,75023.58110,5860.341,578
  8435,43321191,7161.968,52912.6755,1570.261,141
  9484,231220106,6921.326,39910.0848,8320.442,13420398,219
 10463,643238110,5771.506,9669.9646,1760.401,844230106,784
 11409,923265108,5392.188,92710.8344,3760.532,190271111,245
 12407,28023396,0562.218,99610.2441,7210.491,989261106,335
 13358,50127999,8822.258,07610.8538,8840.642,30625691,751
 14402,951283114,1912.279,12911.5246,4280.522,075306123,215
 15388,949305118,4882.178,43611.2443,7220.612,376309120,163
昭和54年までは『豊羽鉱山30年史』200頁、それ以降は豊羽鉱山株式会社『報告書』各期より作成。

表-73 豊羽鉱山埋蔵鉱量推移(昭和48年度~)(鉱量:トン)
年度確定推定予想合計年度確定推定予想合計
昭482,800,3604,578,1803,140,51010,519,050平 11,526,2705,358,0708,140,01015,024,350
 492,586,6904,629,0203,215,99010,431,700  21,477,1805,398,1508,743,86015,619,190
 502,587,0304,724,3903,373,34010,684,760  31,361,2405,708,9109,233,56016,303,710
 512,121,2003,157,5203,605,5608,884,280  41,613,0105,172,8509,436,61016,222,470
 521,910,9503,331,4903,242,7008,485,140  51,393,9405,463,3409,567,57016,424,850
 531,856,2103,348,6203,306,4208,511,250  61,456,8204,489,4907,946,23013,892,540
 541,220,1603,057,3306,316,21010,593,700  71,367,7704,201,5807,739,64013,308,990
 551,219,0703,077,2506,467,98010,764,300  81,404,7903,931,2207,599,57012,935,580
 561,363,0603,211,6707,019,39011,594,120  91,263,0003,827,0007,585,00012,675,000
 571,436,0303,378,3307,228,43012,042,790 101,280,0003,789,0007,728,00012,797,000
 581,422,4903,761,5607,804,47012,988,520 111,158,0003,609,0007,950,00012,717,000
 591,586,4504,048,5307,919,15013,554,130 121,201,0003,638,0007,962,00012,801,000
 601,575,9904,888,3208,038,47014,502,780 131,020,0003,989,0007,868,00012,877,000
 611,643,8605,152,7907,946,09014,742,740 141,227,0004,256,0007,621,00013,104,000
 621,480,4005,279,2508,184,03014,943,680 151,278,0003,885,0007,501,00012,664,000
 631,345,3905,419,2107,890,79014,655,390 161,401,0003,643,0007,345,00012,389,000
4月1日現在。ただし昭和52年以降は1月1日現在。
平成9年以降は100トンの位を四捨五入。
昭和54年度までは豊羽鉱山30年史、それ以降は豊羽鉱山総務課より。

 この間、選鉱過程では目覚ましい技術革新が行われた。それはコラム浮選機の導入である。すなわち巻き上げ機とベルトコンベアで選鉱場に運ばれた鉱石は〇・一ミリメートル以下に粉砕された上で浮遊選鉱されるのであるが、その際、従来の浮選方法とは違うコラム浮選法が採用されたのである。コラム浮選機自体は一九六〇年代に開発されたが、その実用化は五十六年のカナダにおける銅モリブデン分離浮選を端緒とし、その後、アメリカ、カナダを中心に、銅精選にも適用されている。豊羽鉱山では、六十一年十一月から自家製四五センチメートル径コラム浮選機による試験を行い、六十三年十月には本格的なコラム浮選機が完成し、世界初の鉛・亜鉛鉱のコラム浮選に成功している(豊羽鉱山選鉱課「コラム浮選機の導入」平1・6・1、および同総務課)。
 コラム浮選機は、従来機と比べて浮選時間が長い等の問題を抱えているとはいえ、縦長で設備機構が単純なために撹拌機械もいらず効率の良い処理が出来るので、コストを低減して精鉱品位を上げることが可能という優れたメリットを持っている。平成十六年三月末現在、いずれも高さ一六メートルで口径二・七メートルのもの二基、同二・四メートルのもの一基、同二・一メートルのもの一基、一・八メートルのもの一基、一・五メートルのもの三基、合計八基が稼動している。
 製品となった各精鉱は日鉱金属(株)に販売され、それぞれ製錬のため銅精鉱は秋田県の小坂製錬(株)、鉛精鉱は広島県の東邦亜鉛(株)と青森県の八戸製錬(株)、亜鉛精鉱は秋田県の秋田製錬(株)飯島製錬所、硫化精鉱は茨城県の日立工場に送られている。
 昭和四十八年以降の精鉱生産量推移は表74のとおりである。
表-74 豊羽鉱山精鉱生産量(単位:トン)
(年度)鉛精鉱亜鉛精鉱硫化精鉱銅精鉱(年度)鉛精鉱亜鉛精鉱硫化精鉱銅精鉱
昭4816,35850,46451,982平 19,74674,98051,639
 4912,90244,17937,437  212,04379,77545,777
 5012,49248,51735,734  311,78894,57439,4882,091
 5112,47447,48337,706  413,767100,29136,0552,219
 5212,13350,45734,646  512,44991,82329,8143,218
 5313,77054,59933,203  612,519104,01136,2857,217
 5413,02951,63137,137  713,100107,61634,7032,923
 5514,67256,26033,538  810,04993,1901,562
 5612,75453,46034,517  96,66681,6054,073
 5712,17359,84239,619 107,79676,4064,214
 5811,92561,99934,405 119,79274,0326,191
 5914,08356,66631,222 1210,33170,8545,334
 6015,02461,40722,685 138,57066,3617,194
 6115,86678,85054,107 149,74178,3876,115
 6212,29272,58850,489 158,63573,5686,841
 6313,82283,74852,203
昭和54年度までは豊羽鉱山30年史、それ以降は豊羽鉱山総務課、ただし平成15年度は会社現況より。