豊羽鉱山のインジウムが注目を集めるようになったのは平成四年頃からであるが、その二年前には、「豊羽で鉛、亜鉛鉱脈を発見―レアメタルなど含有」という見出しで次のような報道があった。
「鉱脈が確認されたのは豊羽鉱山南西部で、平成元年度に三カ所のボーリング調査を行った。このうち、二カ所(深度四十五・六五メートル―七百八十七・二〇メートル)で亜鉛四・九二パーセント―三四・〇五パーセント、鉛一・二〇パーセント―四・一パーセントのほか、金は一トン当たり〇・三グラム、銀は同九十一グラム―四百八十九グラム、さらにコンピューターの基盤などに使われるレアメタルの一種のインジウム〇・〇〇二パーセント―〇・二一一パーセントを含む鉱脈を確認した」(道新 平2・4・25)
次いで四年五月には「札幌・定山渓 豊羽鉱山に期待高まる 液晶ディスプレイ透明伝導膜の素材 インジウム 生産世界一 機器発達で需要増 新たな鉱脈も発見」という見出しで次のように報道された。
「札幌市定山渓にある豊羽鉱山が、パソコンやワープロの液晶ディスプレイに欠かせない希少金属インジウムの世界第一の産出地として注目を集めている。年間三十トン近い産出量は国内消費の半分を賄っており、『レアメタルとしては驚異的な自給率』(金属鉱業事業団定山渓支所)という。同鉱山周辺では新たにインジウムを含む有望鉱脈が見つかり、関係者の期待が高まっている。」(道新 平4・5・2)
その後、次のように新聞等で続々と取り上げられていった。
「豊羽鉱山の南に有望3鉱脈 亜鉛、銀、液晶に必要なインジウム」(道新 平5・4・27)、「豊羽鉱山 有望2鉱脈確認 亜鉛やインジウム含有」(道新 平8・6・4)、「パソコン支える札幌の希少金属 液晶部品用インジウム 需要の三分の一 豊羽鉱山産」(朝日 平10・5・7)、「札幌・豊羽鉱山 パソコン人気『ヤマ』に追い風 液晶電極用インジウム産出 国内向け5割供給『今後20年は大丈夫』」(道新 平10・8・3)、「ハイテク製品の電子材料を大供給『豊羽鉱山』の技術」(週刊ダイヤモンド 平10・7・18)、「電子立国支える豊羽鉱山 インジウム産出量世界一」(フロンティアタイムス 平11・7・9)、「IT支える豊羽鉱山 液晶材料インジウムで脚光 国内需要の半分を産出 世界の3割」(道新 平13・1・10)など。
インジウムは亜鉛精鉱に含まれている。インジウムの含有量が公表されている平成九年度以降の豊羽鉱山における亜鉛精鉱生産量推移は表75のとおりである。
表-75 豊羽鉱山亜鉛精鉱生産量とインジウム含有量 |
年度 | 亜鉛精鉱 (t) | 含有量 | ||
銀 (kg) | 亜鉛 (t) | インジウム (kg) | ||
平 9 | 81,605 | 40,796 | 46,300 | 78,972 |
10 | 76,406 | 40,831 | 43,688 | 81,749 |
11 | 74,032 | 42,072 | 42,047 | 89,499 |
12 | 70,854 | 38,979 | 39,501 | 85,090 |
13 | 66,361 | 40,855 | 36,905 | 64,699 |
14 | 78,387 | 48,009 | 44,093 | 85,662 |
15 | 73,568 | 47,431 | 41,556 | 83,162 |
豊羽鉱山株式会社『報告書』各年度より作成。 ただし15年度は「会社現況」より。 |
平成十四年度の亜鉛精鉱中インジウム含有量は約八六トン、採収率五五パーセントとすれば約四七トンの生産量となる。これは世界生産の約一八パーセント、国内需要の約三〇パーセント分に相当する(豊羽鉱山 http://www.meti.go.jp/feedback/downloadfiles/i40618bj.pd 平16)。