札幌市は、昭和四十六年の長期総合計画では、「現在及び将来における快適な生活環境の確保」という認識で公害対策を行った(長総)が、五十一年の新札幌市長期総合計画では、「清浄な空気と水、静かな環境は、市民の健康と快適な生活を維持するための最も基本的な条件である」として「良好な環境をあらゆる都市活動に優先して確保する」という環境保全の意識を持つようになった(新長総)。
二回の五年計画(実際には八年)実行後、五十九年からの五年計画では、「公害の未然防止をはかり、さらに快適な環境の創造をめざしていくには、公害発生源に対する規制・指導の強化はもとより、地球の環境を一体のものとしてとらえ、街づくりのなかで総合的に施策を展開していくことが重要」とする認識に発展する。そして事業計画のなかに、「規制・指導の強化」や「監視・測定体制の充実」に加え「総合的環境保全対策の推進」が付け加わった(札幌市 新札幌市長期総合計画 第3次5年計画(昭和59~63年度)昭59・3)。
さらに六十三年の第三次札幌市長期総合計画では、「全般的な環境の改善が進んだ結果、市民の意識も、公害の防止という従来の対策に留まらず、良好な環境の創出や生活の質の向上を求めるものへと変化している」という認識を持つに至った。そこでその基本方針には、従来と同様の「公害防止をはかること」に加え、「快適な環境の創出のため、地域の自然的、社会的特性を生かし、環境の持つ受容能力に配慮しつつ、総合的、計画的な環境の管理に努める」と環境に配慮する環境保全政策を行うこととした。「施策」にも「総合的・計画的な環境管理の推進」を加えた(三長総)。
その後二回の五年計画実施のなか(実際には八年)で、札幌市環境基本条例(平7)を制定し、平成八年からの五年計画では、項目名をそれまでの「公害」から「公害(環境保全)」に変更した(札幌市 北の理想都市さっぽろ 第3次札幌市長期総合計画 第3次5年計画(平成8~12年度)平8・3)。
十二年の第四次札幌市長期総合計画では、それまでの公害問題への取組は、防犯などとともに都市内の社会的なモラル低下から発生する問題として、「日常の安全な暮らしの確保」のなかで「都市生活型公害防止」に引き継がれた。そして新たに「環境低負荷型社会の構築」のなかに「地球環境保全に向けた取組」を設け、「札幌も地球市民の一人として地球環境の保全に向けて積極的に取り組むことが求められている」として国際的な環境保全の取組に協力または参加するとともに、「環境保全意識の醸成と環境負荷低減に向けた活動の促進」として環境教育とリサイクル活動への支援などを行うことにした(四長総)。
十五年には、公害問題への取組は、都市生活型公害の防止として大気、音振動、ダイオキシン類などの有害化学物質問題への対応、交通公害対策の推進として低公害車・指定低公害車の普及、低公害車等購入資金融資あっせん制度、中央卸売市場構内運搬車の低公害化、アイドリングストップ運動、沿道環境対策事業を行っている。地球環境保全に向けた取り組みは、札幌温暖対策推進計画の推進、太陽光発電普及促進事業、ISO14001(環境マネジメントシステム)、環境影響評価(アセスメント)制度、熱供給事業対策、酸性雨対策・オゾン層保護・熱帯材の使用削減など地球規模で広がる環境問題への取り組み、環境保全意識の醸成と環境負荷低減に向けた活動の促進、環境保全に関する国際協力を行っている。そして十五年二月札幌市公害防止条例を全面改正して札幌市生活環境の確保に関する条例を制定した。それには、地球環境の保全などの新たな項目が加わり、事業者に環境負荷低減のための行動計画書の作成・提出を規定するなど、より強力な環境保全をめざしている(概要 平15)。