五十一年春には建設業を主にして市内の企業倒産が増加したのに加えて、事務機器のオートメーション化もあり、求人状況は民間企業の一般事務職求人が激減し、道内市中銀行では例年に比べて一〇パーセントが減少し、相互銀行・生命保険会社、火災海上保険会社が二〇パーセントの減、貿易・商事会社、建設・製造関係会社が五〇パーセントも減少する厳しさであった。
その後、五十五年になると景気が少し上向き、高校生の求人が増え好調となり、一月末には八割以上が決定し、遅くとも五月ころにはほぼ全員が就職できると札幌職業安定所は予測した。求人はサービス業、建設業、製造業、卸・小売業が多く、半面、鉄鋼や出版、印刷業が落ち込こみ、プログラマーなどの求人が目立ち始めた(道新 昭55・2・24)。五十六年四月には、北海道が五十三年に策定した「婦人行動計画」の具現化である初の道立女子高等職業訓練校(東区北二東一)が開校した。経理事務・写真植字・トレース・販売管理の各科を開設し、販売管理は中間管理者を育成する目的で初のキャリアウーマン専科を目指した。高校卒もしくは同程度の技能習得能力があれば年齢は問わず、授業料は無料であった。技術を体得したいと高校新卒が七六人、過年度卒の二五歳まで二七人合計一〇三人が入学した。だが、一期生の求人はいずれも低い結果となった(道新 昭55・9・17)。五十六年は、中学・高校卒業予定者の求人は不況により採用が手控えられたうえ、採用条件の高学歴化が始まり、高校卒は前年並みだが中学卒は前年の同じ企業からの求人が半数に減り、中学卒離れが憂慮された(道新 昭56・8・19)。
五十七年ころから中学卒の職種に高卒や各種学校卒が、高卒の職種に大学卒が進出し始める傾向になった。同時に高校に行かずに手に職をつけたいと希望する中学生や、高校にも行けない、行きたくない中学生も増えてきた。
「女子悲鳴、職がない」と言われたのは五十九年であり、続く六十二年は円高不況が進み、深刻な雇用情勢となった。北海道の高校卒就職率は全国の最後尾から二番目で、男女平均は八七パーセントとなり特に女子の落ち込みが大きかった。
表42によって市内新卒の初任給の推移を見ると、オイルショック以降では物価上昇率が初任給を引き上げさせ、春闘に連動して四十八・四十九・五十年は前年比二割、三割、二割近いかつてない最高の上昇率となった。その後の不況・低成長期には物価上昇率よりやや低い水準で上昇し、その率は次第に低下するものの上昇傾向は六十三年まで続いた。初めて一〇万円台となったのは男子が大学卒で五十三年、短大卒が五十五年、高校卒が五十七年、女子はそれぞれ男子に一年遅れであった。また、五十五年には週休二日制を採用している市内の事業所が初めて過半数を超えた(札幌地区労調査)が、逆に一日あたりの残業や長時間労働が増える傾向にあった。
表-42 札幌市内の学歴別初任給実績(全業種平均・事務販売)の推移 |
高卒 | 短大卒 | 大卒 | ||||||||||
男子 (円) | 前年比 (%) | 女子 (円) | 前年比 (%) | 男子 (円) | 前年比 (%) | 女子 (円) | 前年比 (%) | 男子 (円) | 前年比 (%) | 女子 (円) | 前年比 (%) | |
昭48 | 45,888 | 21.4 | 43,444 | 20.2 | ― | ― | ― | ― | 56,814 | 19.1 | ― | ― |
49 | 60,161 | 31.2 | 58,064 | 34.6 | ― | ― | ― | ― | 73,073 | 28.6 | ― | ― |
50 | 70,384 | 17.0 | 68,064 | 16.4 | ― | ― | ― | ― | 84,563 | 15.7 | ― | ― |
51 | 75,344 | 7.0 | 72,613 | 6.7 | 82,889 | ― | 78,083 | ― | 90,730 | 7.3 | 84,769 | 8.2 |
52 | 81,281 | 7.9 | 78,718 | 8.3 | 89,153 | 7.6 | 84,032 | 7.6 | 96,948 | 6.9 | 90,743 | 7.0 |
53 | 85,610 | 5.3 | 82,479 | 4.8 | 92,563 | 3.8 | 88,371 | 5.2 | 102,399 | 5.6 | 97,030 | 6.9 |
54 | 88,328 | 3.2 | 85,510 | 3.7 | 96,411 | 4.2 | 92,790 | 5.0 | 105,990 | 3.5 | 100,947 | 4.0 |
55 | 93,111 | 5.4 | 90,327 | 5.6 | 100,212 | 3.9 | 96,894 | 4.4 | 111,093 | 4.8 | 105,424 | 4.4 |
56 | 96,407 | 3.5 | 93,148 | 3.1 | 105,974 | 5.7 | 101,004 | 4.2 | 115,450 | 3.9 | 110,484 | 4.8 |
57 | 101,554 | 5.3 | 98,444 | 5.7 | 110,025 | 3.8 | 106,042 | 5.0 | 123,268 | 6.8 | 117,719 | 6.6 |
58 | 104,479 | 2.9 | 101,327 | 2.9 | 113,156 | 2.9 | 109,485 | 3.3 | 127,574 | 3.5 | 122,395 | 4.0 |
63 | 110,400 | 2.6 | 121,600 | 2.6 | 138,400 | 2.8 | ||||||
平13 | 148,013 | ▲2.4 | 155,962 | ▲0.1 | 173,285 | ▲2.4 |
昭和48~58年は札幌商工会議所企画室調査による『昭和58年度 札幌市内初任給及び燃料手当の支給状況』、昭和63年はたくぎん総合研究所調査による北海道男女平均(道新 昭63.4.15)、平成13年は北海道中小企業同友会調査による札幌市の男女平均金額。▲はマイナス。 |