五十年代後半、市民の作品創作・発表の場に変化が訪れた。それまでは職域誌や同人誌の全盛期であったが、しだいにカルチャー教室などを母体とするサークル誌へと、創作の場が移行したのである。
各新聞社や放送局のカルチャーセンターでは、五十年代に文芸創作講座の開講が相次いだ。受講生の多くは女性たちであり、各講座から合同作品集やサークル誌が生まれるようになった。五十八年九月創刊の随筆集『堅香子(かたかご)』は、NHK文化センター随筆講座(講師・佐々木逸郎。平成四年から小松瑛子)の年間作品集である。同センター小説作法講座(講師・いのうえひょう)は五十九年に『藍』を創刊した(平成十四年で九号)。日高昭二を講師とする短編小説作法講座からは二誌が生まれ、一つは五十八年創刊『間道(かんどう)』(平成三年で一九号)であり、もう一つは六十年創刊の『三月派』(平成六年で一一号。昭和六十一年から工藤正廣が講師)であった。同センターの詩を作る講座(講師・笠井嗣夫)は、五十九年に『梟(グッフォー)』を創刊し、平成十六年九月で四二号が出ている。
道新文化センターの随筆創作講座(講師・川辺為三)からは、昭和六十一年に『河一〇八』が創刊された。平成十六年七月で二〇号となったが、同年の第七二回小説現代新人賞を受賞した朝倉かすみら、若手の逸材を育てた講座でもある。同センターの現代詩講座(講師・永井浩)は、昭和六十一年から合同詩集『水曜の詩集』を年一回発行している。
朝日カルチャーセンターの小松茂の小説作法講座からは、六十三年に『蝸牛(かたつむり)』が刊行され、平成十一年で一二号が出ている。同センター現代短歌講座(講師・菱川善夫)は、実作を行わず作品評釈に力を置き、昭和五十五年に『花づな』を創刊した(平成四年の一〇号で休刊)。
短歌・俳句・川柳などの実作講座は人気が高く、多くの受講生が学んでいる。全国的に「カルチャー歌人」という言葉も生まれたが、受講生作品の特色を、山名康郎は「既成短歌の毒に染まないナイーブな清潔な抒情」があると('87札幌芸術文化年鑑・短歌)評価している。『札幌芸術文化年鑑』平成刊行分によると、短詩型各教室の講師は、短歌は山名康郎、内田弘、森輝子、菱川善夫、堀井美鶴、松川洋子、鎌田和子ら、俳句は木村敏男、北光星、堤白雨、新妻博、椎名智恵子、林佑子ら、川柳は斎藤大雄、塩見一釜、葛西未明、桑野晶子らであり、いずれも長らく指導にあたっている。