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街に広がる彫刻美術

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 美術が年を追うごとに市民生活に広く深く浸透していくなか、市内にある野外彫刻は「優に三百三十点を超える」(財団法人札幌市芸術文化財団 札幌散策―野外彫刻を楽しむ小さな旅 平16)という。これは昭和三十年代あたりから増え始め、四十五年以降に本格化したものだが、まとまったかたちで札幌市内の各所に設置されたのは、その後の昭和五十五年以降平成年代前半にかけてであった。彫刻が人々の身近にあることの意義を市民や行政が改めて認識し、地域開発にアートを積極的に取り入れようとする動きが強まったこと、パブリック・アート(公共的な空間に設置された芸術作品)という言葉が一般化したこと、バブル時代であったことなどがその理由といえる。またパブリック・アートとしての野外における彫刻のありようを人々に示した、北海道立近代美術館札幌彫刻美術館札幌芸術の森野外美術館など美術館の果たした役割も忘れてなるまい。
 大規模なパブリック・アートの近年の例としては、五人の彫刻家で構成された造形集団CINQ(サンク)による石山緑地(平9)、札幌ドーム周辺のアートグローブ(平13)、JRタワー内外のパブリック・アート(平15)、そしてイサム・ノグチが最晩年にマスタープランを手がけたモエレ沼公園(平16)などが挙げられよう。