炉辺叢書(ろへんそうしょ)の一冊として

小県郡民謡集
上田女子短期大学 大橋敦夫

 炉辺叢書は、大正一〇(一九二一)年から昭和四(一九二九)年にかけて、日本民俗学の開拓者・柳田国男の指導のもとに、民俗学の草分け的研究者によって編まれた。それらは、今や日本民俗学最大の古典的名著と評価されている。原典資料とされる昔話や伝説・田唄などの口碑伝承や民俗誌の数々が提供されているのである。
 その具体的書名を、本書(『小県郡民謡集』)の巻末にある「既刊書目」によって、少々ながめてみよう。
  『飛騨の鳥』(川口孫治郎)
  『三州横山話』(早川孝太郎)
  『古琉球の政治』(伊波普猷)
  『郷土誌論』(柳田国男)
  『南島説話』(佐喜真興
  『小谷口碑集』(小池直太郎)
  『江刺郡昔話』(佐々木喜善)
  『祭礼と世間』(柳田国男)
  『熊野民謡集』(松本芳夫)
  『アイヌ神謡集』(知里幸恵)
  『遠野方言誌』(伊能嘉矩)
 これらの書目の中に、本書がラインナップされているのである。