《物産》

 「卵紙、生糸、及び各種の絹織物を出す其内卵紙は尤も佳品と称せられ他郡他国へ輸出」と書かれています。各地の農村から湯治客が訪れていたのでしょう。優良な卵紙(の卵が産みつけられた和紙)の紹介をしています。《名勝寺社》にある氷澤の「風穴」は、天然の卵紙貯蔵庫でした。別所温泉案内にまで蚕種のことが書かれているのは明治三十年代、「都上田」の奥座敷として別所温泉が認識されていたからでしょうか。
 松茸は現在でも別所の名産ですが、当時は岩名もとれ、とくに「美なり」とあります。