小品逝く春

            6
          ピ ラ ミ ッ ト 生
山下霞む落花の夕ま暮れである。オレンジに栄えた夕照もうつすらと消えて、黄昏の影は何処(どこ)からともなく四辺を罩め(こめ:すっぽりおおい隠す)てしまつた。と、いと重たそうな足どりで落ち散る花を踏んで来る五十路あまりの老僧がある。一歩一歩夕靄に薄れ行く彼れの後姿、折から岸行寺の暮の鐘ゴォーンと余韻長く、老僧の胸へ如何に悲しと響くだろう。2片3片もなく散る、彼れが肩へはらはらとかゝつた。