『サイベ沢遺跡』報告書(市立函館博物館刊)
函館で大規模な調査が実施されたのは、昭和24年の桔梗サイベ沢遺跡発掘調査である。約2か月間にもわたる長期の発掘が行われたことは北海道ではかつてなかったことで、縄文時代人骨の発掘と、巨大な円筒土器の文化を解明するこの調査は、児玉作左衛門、大場利夫を中心に市立函館博物館が調査主体となって行われた。本州と北海道の縄文文化を解明する土器や石器と、貝塚から出た漁労具の量はおびただしいもので、発掘には市内の大学生や高校生が参加し、連日訪れる市内の小・中学校、高等学校などの見学者が3000人を超える日もあった。この大発掘は当時重大ニュースとして日本ニュース映画に上映され、全国に伝えられた。地表から深さ5メートルにわたる地層に完全な土器が詰まっていて、縄文時代前期から中期に至る約2000年間の円筒土器文化の移り変わりが把握された。また、骨角製の漁労具や狩猟生活を示す道具の数々が発見され、人の顔を模した装飾土器や護符を意味する人形も出土し、不明であった本州との文化交流の状況などが明らかにされた。