北海道の自然

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 先史時代の自然環境は文化の上でも大きな影響を与える。縄文時代の初めは、晩氷期といって、氷河時代が終ってからも寒冷で、道南地方は高山地帯のように草原やわずかな灌木(かんぼく)しかなかった。現在のように暖かくなるのは縄文時代前期から中期で、その間に寒冷な時期があった。狩猟と漁労生活が生業であったから、動物や魚などの狩猟、漁労用具の変化もあったが、人種や民族の移動は陸上よりも海上で行われた。これは魚を求めたり、海流の利用によってなされた。北海道は太平洋沿岸、日本海沿岸、オホーツク海沿岸に分けることができ、太平洋沿岸は襟裳岬を境として東側の十勝、釧路、根室千島海流の影響を受けるが、西側の日高、胆振、渡島の東海岸は対馬海流と千島海流の影響を受ける。日本海沿岸は北のリマン海流に直接影響されるところと、南の対馬海流の影響を受けるところとがある。オホーツク海沿岸はリマン海流の影響を受け、宗谷から雄武、常呂、網走、斜里に至る地域は冬期に流氷に見舞われる。太平洋沿岸、日本海沿岸、オホーツク海沿岸では海流と高、低気圧の状況で気温の差も著しい。現在でも沿岸地域の差があって自然環境も異なる。縄文時代の遺跡と性格の差が、沿岸地域別にそれぞれ特異性を持っているのは、海流と人間の生活が極めて密接な関係にあったからと言えよう。