森林の保護

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 文化年間の公文書によれば、100石以上の船舶を製造する際は、箱館付近をのぞき、六箇場所において許可を受けて木材を伐採し、規定の税金のほか100石につき松・杉・椴松・刺楸(せんのき)の類の苗木100本ずつを箱館山に植付けさせ、代銭をもって納める場合には、苗木1本につき20文ずつとしたが、後には、みな代銭で納めさせるようになった。この植林についてはその後どうなったかつまびらかでない。
 箱館山の樹木に対してはこのようにすこぶる周到な保護をもってのぞみ、官においては毎年3月末から4月にわたり、山番をおいて野火を警戒したり、またほ文政中の公文書綴によれば、箱館町会所から年々左の触書を各町に発している。
 
前々相触れ候通り、箱館御山苗木は勿論、小柴たりとも、決して伐取申すまじく、殊に磯廻り、野懸等に罷出候者共、野火つけ申さざる様、家内召使に至る迄申付くべく、万一右体不埒之者これ有るに於いては、御召捕の上厳敷御咎仰付けられ候間、心得違いこれ無き様致すべく、此段相触れ候。以上
    文政申三月二十八日        町会所

 
 卯之助の植えた苗木もこのような保護の下に生育して美林となったのである。