この伺書を受取った太政官正院は、左院と司法省にこの伺書を示し意見を聴取したが、両方とも「異存無之」(左院…27日回答)、「別慮無之」(司法省…28日回答)と回答して、30日に「伺ノ通」という指令が正院から出た。この間、開拓使は23日と27日の2度にわたって指令を催促する書簡を正院中の史官に送っている。函館へ酒田県士族を送った、黒田次官はかなり性急な気持ちになっていたようである(「開公」5506)。
なお、札幌の邏卒設置の正院伺は1か月後れの9月15日に提出、3日後の18日に設置が承認されている。
邏卒設置承認の通知を受けた函館支庁は、9月23日に函館邏卒編成見込に基づき邏卒全員を大中少邏卒に分けて発令替えを行っている。ただ、先に21人を札幌に派遣していたため、この時の函館の邏卒は29人であり、大邏卒に3人、中邏卒に八8人、少邏卒18人体制となった。山内久内は邏卒御用係(官等11等の権中主典)で、その上に先に東京出張所で函館邏卒御用係の発令を受けていた岐阜県士族の9等出仕有竹裕が統括していた。邏卒の屯所も先の仮本営が第1大区の屯所という位置付けとなり、これ以外に西浜町海岸(38番地の4)と地蔵町地蔵堂に分営が設けられ、それぞれ第2大区の屯所、第3大区の屯所(明治6年3月22日の火事で類焼、蓬莱町1番地に仮屯所設置)となった。
表2-6 函館邏卒編成見込一覧
1 函館市街を3区に分つ
区画割 | 配置邏卒内訳 | 計 | ||
第1区 | 大邏卒1人 | 中邏卒4人 | 少邏卒12人 | 17人 |
第2区 | 大邏卒1人 | 中邏卒4人 | 少邏卒12人 | 17人 |
第3区 | 大邏卒1人 | 中邏卒4人 | 少邏卒12人 | 17人 |
合 計 | 51人 |
2 邏卒課官員井月給 総額1,592.16円
等級 | 職名 | 人数 | 月給 | 増手当 |
9等 | 総長心得 | 1人 | 50円 | 3.50円 |
11等 | 権検官 | 1 | 30 | 2.10 |
13等 | 権区長 | 1 | 20 | 1.40 |
15等 | 3等権区長 | 2 | 12 | 0.84 |
3 邏卒月給 総額5,392.80円
邏卒 | 人数 | 月給 | 増手当 |
大邏卒 | 3人 | 10円 | 0.70円 |
中邏卒 | 12 | 8.5 | 0.595 |
少邏卒 | 36 | 8.0 | 0.560 |
4 その他の経費(1か年分) 総額6,357.30円
費目 | 金額 | 備考 |
屯所諸雑費 | 円 612.00 | 邏卒1人(51人分)に付1か月1円 |
屯所使役夫雇賃 | 388.80 | 屯所3か所で各2人 1日1人に付18銭 |
邏卒防寒手当 | 331.50 | 人に付6円50銭 |
旅費営繕医薬 | 720.00 | 1か月60円の見込 |
邏卒賞典 | 255.00 | 1人に付5円 |
仮屯所取建費 | 600.00 | 屯所3か所 1か所200円の見込 |
市街点灯 | 750.00 | 150基取建 1基5円見込 民費の予定 |
点灯用石炭油 | 2700.00 | 1基1夜1合の見込 1合5銭 民費の予定 |
総計 | 6357.30 |
総合計13,342.26円 内1か年官費定額は9,292.26円
箱館邏卒屯所の図 邏卒・鹿島調一郎筆