函館県は旧開拓使函館支庁の管轄地を所管することとなり、開拓大書記官の時任為基が函館県令、開拓権少書記官の有竹裕が函館県大書記官、開拓御用係准奏任堀金峰が函館県少書記官に任命され、函館県の上局を担った。開拓使函館支庁の残務取扱いには有竹裕函館県大書記官があたり、3月11日には、16日から函館区元町1番地の元開拓使函館支庁庁舎を函館県庁として開庁する旨が布達された。
函館県の分課体制は、開拓使函館支庁時代と比較すると細分化され(表2-59)、職員も旧開拓使函館支庁職員がほぼそのまま県の職員(2月15日県官辞令)となっている。
14年の事件の際、函館市民が強く払下げを望んだ常備倉と船舶のその後であるが、まず船舶は払下げを修正、拝借を請願して許可を得ることになる。開拓使の廃止後、船舶は農商務省の所属となった。そこで、最初に汽船と倉庫の払下げを出願した36人の内、杉浦嘉七、小林重吉、常野正義、藤野喜兵衛、田中正右衛門、佐野専左衛門、村田駒吉、金沢弥惣兵衛、安浪次郎吉、相馬哲平、泉藤兵衛、脇坂平吉の12人が元開拓大書記官堀基と共に、北海社が払下げを受ける予定であった6艘を含めて9艘の船舶の拝借を農商務省に出願、北海道運輸会社を設立(15年3月10日)した。3月23日農商務省から許可が下り、4月営業を開始したのである。
表2-59 函館県事務分掌
課名 | 分掌事務 | 係名 | 職名 | 官等 | 課長名 | 月俸 |
庶務課 | 政令認体、民情視察 戸口統計、布告布達の公布 郡区管掌、議会管掌 外国交際、職員進退典礼 社寺、徴兵、賑窮、出版 新聞、文書の往復 史誌の編集、簿書の管理等 | 常務、職務 受付、外事 戸籍、編輯 | 課長心得 | 4等属 | 村尾元長 | 40円 |
勧業課 | 興業殖産、職藝勧奨 物産振興、殖民、駅逓 郵便、官船等 | 農務、商工 水産、駅逓 殖民 | 課長心得 | 御用係 | 二木彦七 | 60 |
租税課 | 租税徴収 賦金協議費等の事務 | 国税、雑務 地方税 | 課長 | 2等属 | 丸茂謙吉 | 50 |
兵事課 | 陸海軍兵事 | 課長心得 | 5等属 | 大庭機 | 35 | |
学務課 | 学事督励、教育普及 | 督学、理事 報告 | 課長心得兼函館師範学校監督 | 6等属 | 村岡素一郎 | 30 |
衛生課 | 衛生視察、人民健康保持 | 医務、保全 統計 | 課長兼医学所長函館病院長 | 御用係 | 深瀬鴻堂 | 150 |
土木課 | 道路橋梁水理堤防其他建営 | 土木、営繕 | 課長心得 | 4等属 | 木村成苗 | 40 |
地理課 | 官民有の土地管掌 土地測量、山林保護培養等 | 山林、地籍 測量 | 課孝心得 | 5等属 | 野沢房迪 | 35 |
出納課 | 金穀の出納計算管理 公債貸付、銀行、調度 | 調査、主簿 掌貨、銀行 公債、用度 | 課長 | 3等属 | 石井広正 | 45 |
出港税係 | 出港鋭敏収 物品船舶出入調査 港内昏泊内国商船取締 | 係長 | 2等属 | 阿部重遠 | 50 | |
警察本署 | 警察事務 | 警部長心得 | 2等属相当 | 山内久内 | 50 | |
監獄署 | 監獄事務 | 副典獄 | 3等属相当 | 樋口光明 | 45 |
明治15年5月30日番外布達『明治十五年函館県布達々全書』、明治15年『函館県職員録』より
注1 明治17.5.16庶務課編輯係を廃止し、記録係を出港税係と同様の形で置く
注2 明治17.6.19租税課を収税課と改称
注3 明治17.9.27収納課の係を整理、地租、水産税、雑税、収納、地方税の6係に改正
注4 兵事課は明治16.2.14設置