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 9月から10月初旬にかけての道南地方は、日本海を急速に北上してくる台風の襲来があって、天候の急変が懸念されることが多い。これらの秋の台風で、東北地方を横断し太平洋に抜けるものは函館を中心に大雨をもたらすことが多い。一方、北海道西南岸沿いに北上するものは強い南風の暴風となり、道南地方としては最悪の気象状況となる。
 秋の集中豪雨による災害は、水害そのものよりも山崩れ、土石流(山津波(やまつなみ))などの二次災害が多くなっている。1973年(昭和48年)9月、渡島半島南部を襲った集中豪雨は、図2.2(南渡島の集中豪雨)に示したように、知内町小谷石で大規模な土石流を引き起こし、小谷石地区の70%以上を壊滅させ死者7名を出している。1954年(昭和29年)の洞爺丸台風(台風第15号)は、恵山町においても住宅(全壊26戸、半壊587戸)・漁船(89隻)・農林業に甚大な被害を与えた。

図2.2 南渡島の集中豪雨(昭和48年9月23日午前9時〜25日午前9時の2日間総雨量分布)
浅野芳監修・北海道新聞社編(1976)『北の天気』p187原図

 
 10月になると晴天日数は1年を通じて最も多く、気温も降下して北海道らしい清涼な天候となり、秋晴れの澄んだ空が見られることが多い。豊かな恵山の味覚と恵みを祝って開かれる「紅葉まつり」。地元産の漁獲物、イカ・ホッケ・サケ・ウニ・コンブなどの海の幸、近在の農産物や特産品で、胃袋と美しい自然を楽しませてくれるのもこの時季である。
 図2.3(北海道の紅葉時期)は、北海道における日最低気温が紅葉の適温8℃以下になる日を示したものである。この図を見ると、亀田半島南東端の恵山の紅葉は、室蘭地方や松前半島の江差地方に次いで遅く10月15日〜20日頃である。

図2.3 北海道における日最低気温が紅葉の適温(8℃以下)になる日
浅野芳監修・北海道新聞社編(1976)『北の天気』p239原図

 
 初霜は室蘭、浦河よりやや早く、10月中旬に見られ、10月下旬には初氷も張り、亀田半島最高峰の横津岳(1167メートル)では平年10月24日に初冠雪がある。この頃発達した低気圧や台風は、局地的に津軽海峡の松前−恵山岬間に高波を起こし、沿岸の漁港・漁船・道路・護岸などに多大な高波被害をもたらす。図2.4(恵山御崎−松前の高波)はその代表的な風浪発生と高波の例である。

図2.4 恵山岬−松前間の高波の例
1968年(昭和43年)10月24日午後9時の天気図と風浪とうねりの伝わり方(黒く塗りつぶしてあるのが高波被害箇所) 浅野・北海道新聞社(1976)原図

 
 すなわち、1968年(昭和43年)10月25日、発達した低気圧が三陸沖を北東進したが、24日夜半から道南・道東沿岸に高波が押し寄せ、道路・護岸の欠、損壊36か所、港湾漁港被害14か所、漁船被害65隻の被害が発生した。これは10月24日、三陸沖で風速15〜20メートルの南東−東南東の風によってつくられた波がうねりとなって押し寄せ、また、各海域の風波も重なって生じた高波である(浅野・北海道新聞社、1976)。恵山町山背泊漁港の波浪計は25日夕刻、最大7メートルを記録し、羅臼(らうす)方面でも3メートルの高波となっていた。椴法華村史年表(椴法華村、1989)によると、「10月25日高潮のため動力船2隻、水産施設80件、中浜の道路・石垣等に被害がでる」と記録されている。
 恵山における初雪は、北海道としては最も遅い方で、平年で11月上旬に見られる。なお、函館市の初雪は11月5日である。