図1-2〈文献5〉に示したように東シナ海からは本州屋久島の西方で黒潮本流から分岐した高温、高塩分な暖水が対馬暖流として日本海に流入し、日本海の東側を北東に流れながら河川水などを含んだ沿岸水、及び日本海固有水と混合して変質しながら北海道に至る。そのあと一部は北海道西海岸沿いに北上してオホーツク海に注ぐが、7割以上は津軽暖流として津軽海峡を東流して太平洋へと流出している。このため北海道沿岸はその地理的位置から予想される以上に、遠く東シナ海を源とする暖水の影響を季節的に強く受けている。
さてここで、北海道と本州に挟まれた狭い津軽海峡の方に流量が圧倒的に多いのはどうしてなのか。これについては第3節に記述する。
いっぽう千島列島沿いに南下してくる親潮は、*オホーツク海の融氷水に源を発しながら根室半島納沙布岬から襟裳岬に沿って距岸数10海里沖を流れ、噴火湾や道南沿岸にまで達している。*この寒流は低温、低塩分であり水棲生物にとって食物連鎖の基礎生産力に影響を及ぼすうちのひとつである栄養塩類*①が豊富である。
図1-2 津軽暖流水の起源
〈文献1〉 尻岸内町史 166頁
〈文献2〉 世界の海をめぐる深層海流、海 知られざる世界 第2巻、日本放送協会、1998.8
〈文献3〉 海洋大循環、Newton、ニュートンプレス、1998.8
〈文献4〉 海流、Newton、ニュートンプレス、1998.8
〈文献5〉 我が国近海の海流(夏)、漁業(教科書)、海文堂出版、平成3年
*①栄養塩類 主に一次生産者(植物プランクトン)の栄養源になる無機・有機化合物あるいはイオン、窒素化合物やリン化合物など。陸地からの供給が多い。珪酸塩・燐酸塩・硝酸塩・亜硝酸塩・アンモニウム塩などは植物プランクトンの成育に欠くことのできないもので、増殖の制限因子となることが多い。