漁業制度の一大改革が敢行されて間もない昭和26年、連合国軍総司令部(GHQ)天然資源局水産部長ヘリングトンは、日本の水産業、とりわけその人口の割合が最も多い沿岸漁民の実態に照らし声明を発表した。以来、この声明と共に漁業制度・改革の諸施策が講ぜられ、漁業生産力の発展と漁業民主化の理想が着々と実現していった。
ヘリングトン声明(1951年2月14日)
戦後の国土縮小と共に多くの漁場を失い、しかも漁村人口は急激に膨張、沿岸漁場は荒廃して一般零細漁民は困窮をきわめた。
殊に、25年4月1日の鮮魚統制撤廃と補給金の廃止を契機とし魚価の暴落と生産材の値上がりは中小漁民の生活を脅かし、沿岸漁村は恐慌前夜にも似た暗い風が吹きはじめ、この凶漁対策は大きな社会問題にまで発展した。
こうした貧困に喘ぐ、漁村の現状に対しその解決策として、昭和26年2月14日総司令部(GHQ)天然資源局水産部長ヘリングトンは、いわゆる5ポイント計画について次のような要旨の声明を発表した。
日本漁船隊の現勢は回復、戦前をやや上回り、魚網そのほか漁船の施設も良好な状態を示している。漁獲高の減少しているイワシ、ニシンを除けば1950年(昭和25)中の生産は258万トン、これは1935~39年(昭和10年から14年まで)の平均に比べて40万トンの増加である。
以上のように日本の漁業復興計画はすでに略々達成されようとしているが、実際には日本の漁業家はますます経営の困難に当面している。それは漁船の増加にもかかわらず、なお漁獲高は戦前の水準に及ばず、漁獲物の販売価格は概して低下しているにもかかわらず、生産原価は高騰している。
この結果、沿岸漁民はますます経営が不健全となっている。この状態を放置すれば漁民に対する膨大な救済費が必要となり、かつ生産の激減を来しひいては今のところ順調に進んでいる漁業改革を脅威することになろう。このような危機克服のためには最小限、次の5項目の計画を実施しなければならない。
一、濫獲した漁場ではそれ以上漁獲を行わず、必要に応じ漁獲の地域的集中をさけること。
二、各種漁業に対して健全な魚族保存規則を設ける。
三、水産庁および各県庁に強力な漁業部門を設置して取締規則を励行すること。
四、漁民の収益を増加させること。
五、健全な融資計画を樹立すること。
この声明は、現在当面している日本の水産業に対して今後の在り方を鋭く指摘した。
道では昭和26年(1951)、ヘリングトン勧告を受け止め臨時道水産振興対策審議会を設置し、2つの重点を掲げ本道水産業の振興を図ることとした。
①漁村経済の安定対策
②資源維持培養に関する事項
尻岸内村もまた、これらを受けて昭和28年(1953)7月に、村内各層代表者による「経済安定対策協議会」を開き、渡島支庁長以下、各課長を招き、古武井小学校を会場に、徹底した勉強会を行った。