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椴法華村長 鎌田作郎

[図]

 「故きを温ねて新しきを知る」という言葉がありますが、椴法華村の先人の遺業と精神を永く後世に伝え、より豊かな明るい村づくりに決意を新たにするため開基百年の記念事業として椴法華村史年表が発刊されたのは昭和五十一年九月でありました。
 以来今日まで十数有余年の歳月が経過いたしましたが、年表に引続き小沼先生に編集をお願いし椴法華村史の発刊に着手したのは昭和五十五年であります。
 椴法華村の歴史は遠く三百五十年程前先人が元村に漁業をきり拓いたことから始まりますが、明治九年旧尾札部村より分村して椴法華村となり今日まで幾多の先人のたゆみない努力によって築かれてきたのであります。
 当村は渡島亀田半島東端の津軽海峡、太平洋、内浦湾の分岐点に位置し、背後には活火山「恵山」を擁する純漁村でありますが、本村住民の父祖の多くは南部、津軽、秋田、越前方面の出身で漁業に対するたくましい開拓魂と、ねばり強い努力によって築き上げられ今日の発展をみるに至ったのであります。近年回游魚等資源の減少や北洋漁業など厳しい国際規制から資源管理型の栽培漁業に意を注ぎ、昆布、うに、ほたてなどの増養殖事業、さけ稚魚などのふ化放流事業、人工礁、大型並型魚礁の設置による根付魚や回游魚等資源の増大事業、港湾整備や荷捌所の新設などによって漁家経済の安定に努力しているところであります。
 また当村は「恵山」を始め美しい自然環境に恵まれ、昭和三十六年道立自然公園に指定されてからは大沼や松前と共に道南の観光地としても広く知られるところとなり、国民宿舎恵山荘や水無海浜温泉など訪れる観光客もあとを絶たない。最近は村内若者たちの発想による銚子海岸を生かしての全道サァーフィン大会も毎年行って地域の振興が図られ注目されているところでありますが、人口の過疎化現象が大きな課題となっております。
 この度小沼先生を始め多くの方々のご努力とご労苦により漸く椴法華村史の発刊をみるに至ったことはまことに意義の深いものであり、特に永い年月をかけ多忙な日々の中から寸暇をさいて編集下さいました小沼先生と関係の皆様には衷心より感謝を申し上げる次第であります。
 椴法華村史が開基以来厳しい風雪とたゝかいながら村の振興発展に努力された父祖先人の功績を偲び、二十一世紀への村づくりに向けて一層の飛躍をする道標となることを念願して発刊のご挨拶といたします。
   平成元年五月