財政の立て直し

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 昭和六年・七年と続く恐慌・冷害・凶作は道南地域の町村をもまた極度の財政難に陥れ、住民生活を強く圧迫することになった。こうした状況の中で渡島地方の地方自治体、特に町村の税負担の軽減が強く望まれるようになり、昭和八年三月に至り地方財政調整交付金制度設定に対する陳情が行われることになった。次にその陳情書を参考として記すことにする。
 
   地方財政調整交付金制度設定ノ儀ニ付陳情
   今次内務省ノ立案ニ係ル地方財政調整交付金制度ハ実ニ地方財政匡救上唯一無二ノ剴切ナル良方策ト思考罷在候由来都市住民ト農村住民トノ間ニ租税負擔ノ著シキ不公平ヲ見ルニ至リタルハ現代ニ於ケル最モ顯(顕)著ナル事実トシテ既ニ幾多ノ資料ニ依リ的確ニ証明セラレタル所ニ有之候之レ畢竟地方自治團体ノ財源貧弱ナルガ為府縣ニ在リテハ各種附加税及雑種税ニ於テ又町村ニ在リテハ各種附加税特ニ特別税戸数割ノ重課ヲ敢テスルノ巳ムナキニ至レルノ結果ニ外ナラサルベク若シ如斯ニシテ推移セバ遂ニ地方自治体ノ経営ヲ極度ノ困難ニ陥ラシメ延ヒテ国家ノ基礎ヲ危クセシムルニ至ルハ必然ナルヘク就テハ之レカ矯正ノ方策トシテ該制度ノ確立ニ依リ地方自治体特ニ町村ニ於ケル負擔ノ軽減ヲ期スルコトハ実ニ刻下ノ急務ト確信スル次第ニ有之候間該案ハ是非共今期議会ニ提案相成リ其ノ実現ヲ期セラレムコトニ御高慮相仰キ度此段特ニ及陳情候也。
   昭和八年三月一三日
   北海道松前郡大島村長 鈴木 東麿
    以下 二十五ヶ町村長
 
 また我が椴法華村においても有志住民より地方財政調整交付金制度の実施が強く望まれ、内閣総理大臣・内務大臣・大蔵大臣宛に『御願』の書面が提出されている。地域住民が内閣総理大臣その他へ『御願』の形で陳情することは非常にめずらしいことであり、このような行為を行ったということは、村財政及び住民生活が極度に困難になっており、止むに止まれずこのような行動となったものと考えられる。
 次にその時提出された『御願』を記すことにする。
 
     御願
      税軽減方ノ儀ニ関シ御願
   町村財政ノ窮状ニ鑑ミ目下政府ニ於テ御配慮ニ預リ居リ候地方財政調整交付金制度ハ一般農漁山村民ノ現ニ苛重ニ悩マサレツゝアル地方税負担ヲ軽減スル上ニ於テ最モ有効適切ノ施策ナリトシテ其ノ実施ノ一日モ速カナランコトヲ待望シツゝアル次第ニ有之候ニ付キ其ノ間ノ実情御賢察ノ上是非共来年度ニ於テ御実施被成下度玆ニ謹テ御願申上候。
   昭和拾年貳月拾日                   敬具
    北海道亀田郡椴法華
                     公吏  菊地庫太
                     漁業  中村小吉
                     漁業  北村長三郎
                     商業  小市末松
                     料理業 瀧潔
                     漁業  林桃太郎
                     商業  福永藤三郎
                     漁業  川口又三郎
                     漁業  中島悦一
                     商業  松本六太郎
                     宿業 村山亀次郎
                     農業  友田彦一郎
                     漁業  久未善蔵
                     漁業  安川富蔵
                     漁業  川島鉄蔵
                     漁業  川口與之作
                     農業  坪井熊太郎
                     漁業  長政長八
                     漁業  石井留藏
                     漁業  川口勝藏
                     漁業  小谷仁三郎
                     農業  鈴木喜三治
                     漁業  佐々木仁太郎
                     商業  川島吉太郎
                     漁業  大森箕三郎
                     教員  古館敏夫
                     公吏  古岐正
                     漁業  花咲萬太郎
                     醫師  葛西教之助
                     醫師  柴田菊日郎
                     官吏  川口清五郎
                     官吏  河村進
                     社掌  赤塚重之
                     公吏  岩崎藤男
                     公吏  大友東次郎
   内閣総理大臣
   内務大臣         殿
   大藏大臣

昭和10年8月建築中の役場庁舎