漁業協同組合申合規則

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 明治十八年一月に函館県より認可された(第四十一条より第四十五条までは、明治十九年追加部分)椴法華村漁業組合申合規則の中に、昆布に関する条文があり、この部分がたいへん良く当時の椴法華昆布漁の約束、製造法、結束方法について記しているので、平易な文にして記すことにする。
(なお、原文は、第六編、第一章水産業、漁業組合の部分に記す)
 
     明治十八年
    椴法華村漁業組合申合規則
     第七章 採藻
  第十八条 採藻は、昆布、若布(わかめ)、布苔(ふのり)の各種とする。
  第十九条 手繰昆布は(根元と先より順に折り始め中央で二折にして結束したもの)竿前収穫の日を夏土用前(立秋前の十八日間)二十日を予定し、元揃昆布(長切昆布)は夏土用入一日前と予定する。
       布苔は、四月一日より一、二、三番まで採取する。以上のことは、漁業組合の総代より前もって組合に通知するように。
  第二十条 昆布採取の始めと終りは、漁業組合の総代が合図すること。採取の始めは旗を下げ、採取の終りには旗を上げること。
  第二十一条 昆布を乾燥したり結束するときは、粗悪品を混ぜたり、砂などが混入しないように注意すること。
       もし粗製のものを発見したときは改良させる。製品には住所氏名を記入した木札を一荷毎につけるように。
  第二十二条 若布、布苔の乾燥や結束、荷造も昆布同様である。
  第四十一条 昆布は長切と元揃の二種類と定める。長切昆布は一把の量を産地では八貫四百目(三十一・五キログラム)に結束し中込(結束した中心部に粗悪品を入れる)などすることなく品質を精選し、上、中、下の三段階に分けること、上等には雨天の昆布等を決して混入しないように。中等は自然乾燥の昆布で良質ではあるが上等の次に位するものとする。雨天に製造した昆布は全て下等昆布とすること。
       元揃昆布は壱把の量を以前と同じように産地では二貫二百目(八・二五キログラム)、結束の時は中込などすることなく、その品質は長切昆布と同じように、上、中、下の三段階に分け、其の残りで、長切昆布や元揃昆布に入れないものはすべて駄昆布、壱把を四貫二百目(三十一・五キログラム)とすること。その他食用にならない物は決して各種の結束の中に入れてはいけない。
  第四十二条 すべての昆布は、左のようなひな形の改め札を漁業組合の総代より公布してもらい、把束の中に入れ、表面に必ず上、中、下の名称一字を朱書して、漁業組合総代の検査を受けてから売出すように。
  第四十三条 漁業組合総代は、検査の時中込等が発見された時は、品質に相当する等級を表示するように命ずること。
  第四十五条 第四十一条に定められ昆布の等級及結束、製造等に不備のある時は漁業組合の総代は、不備な点の改良をさせるように。この場合もし改良に応じない者があった時は第十五章第三十五条によって、五十円の違約金を課し、昆布の売買を禁止するように。
       ただし、違約金を支払えない者の時は漁業組合より除名することがある。
   函館縣渡島國亀田郡椴法華村漁業組合改
     漁業組合   同郡同村
上何昆布   出産人何之誰
     取締之章   漁業総代ノ小印

 
 以上、椴法華村漁業組合申合規則の中より、昆布に関する部分について記してきたが、その中より一、二気づいた点について記すことにする。
 中込について
 第二十一条には、昆布を結束する時に、粗悪品を混ぜたり、砂が混入しないように定められているが、古くより昆布結束時に中込をする悪習があり、この条例が制定される直前の明治十五年秋の輸出用昆布に粗製品が多く、函館県より昆布製造の改善が命ぜられるようなありさまで、これらのような事情が第二十一条制定の背景になっていたものと思われる。しかし第二十一条が定められたからといって中込等の悪習が直ちに無くなったわけではなかった。明治十八年下海岸漁民の一部に、またもや干燥不充分品や品質の粗悪品を梱包の際に詰め込む者があり、このため昆布の価格が低下し良心的な漁民は大変な迷惑をこうむるような有様であった。このため明治十九年に追加された第四十二条では検査を厳重にし、更に第四十五条では違反した者には改良を命じ、それでも命令に応じない者に対しては、五十円の違約金を納入させるか、納入出来ない者については、漁業組合を除名する(実質的には村内で漁業が出来ない)という強い制裁措置が加えられるようになった。