函館支廳管内政務調
運輸
當支廳管下ハ東西南ノ三両海ニ瀕スル百五拾里岬角四支シ港湾亦少カラス函館福山江差寿都等ハ其主眼ナルモノニシテ就中函館ハ最要ノ港此ヨリ各地ヘ定期航行スル汽船ハ別表ノ如ク猶外ニ凡船舶日本形船アリ航海ノ線路及度数ハ年々増加ヲ見ル又函館ニハ造船所四ケ所アリ、該所ニテ製造スル舩舶前後尠カラス。現在當支廳船籍ニ属スル船舶ハ汽船九艘風〓船六十四艘、日本形船(五拾石積以上)
陸路ハ函館ヨリ森村マテ十一里余即札幌本道ノ外ハ槪子海汀ヲ渉リ鳥道ヲ通シ又ハ崎嶇ノ峻(ママ)路ヲ踰ヘ河旁ヲ往来スルヲ以テ車馬交通ノ便ニ乏シ故ニ行旅運輸ハ陸路ノ不便ナルカ為メニ風涛危険ヲ冒シ海路ヲ取ルノ勢ニシテ近年海運ノ増進ニ循ヒ宿驛漸ク退シ殊ニ漁業ノ利薄キカ為從来ノ驛傳営業者モ殆ント其業ヲ失ラントスルニ至レリ斯クノ如キ現況ナルカ故ニ第一、ニ通路ヲ開キ行旅運輸ヲ便ニシ第二、驛傳営業者ヲシテ営業ノ維持ヲ得セシメ、第三、驛傳取締ニ及フニ非スンハ如何ナル方法ヲモ用井サル能ハサルニ付驛傳営業取締準則ハ未タ当支廳管内ニハ施行セサルナリ別紙ニ宿駅里程賃銭表ヲ付シ参考ニ供ス。
抑道路ノ粗悪ハ行旅運輸ニ不便ナルノミナラス百搬ノ農商工業上ニ不利不便ヲ與ヘ土地開進ニ関係スル実ニ重大ナリ曩ニ農商務卿ノ諮問ニ應シ函館縣令ヨリ具申セシ興業意見ニモ之ヲ記載セリ。
郵便物逓送集配ハ其度数同一ナラズト雖モ東海岸椴法華尾札部及ヒ西海岸島歌、原歌間ヲ除クノ地ナルカ為ナリ外ニ奥尻嶋一部ヲ成シ戸長役場警察署病院小学校アリ戸数百六十余然ルニ信書往復ノ方法ナキカ故既ニ郵便線路ヲ開クコトヲ請求シタリ
函館港定期航海表
函館
}間定期航海
横浜 郵船会社 一週間 両地二度出入
函館
}間 仝
小樽 仝 一ケ月間 両地七度出入
函館
}間 仝
根室 仝 一週間毎ニ両地出入
函館
}間 仝
青森 仝 毎日往復
右ノ外函館ヨリ江差、福山地方ヘ航行スル汽船ハ夏期海波静穏ノ日ハ毎日航行ス。
明治18年頃の函館、東京間蒸気船