(3)海岸段丘

20 ~ 21 / 1210ページ
 南茅部町の海岸段丘は大きく、上位段丘と下位段丘に分けられる。上位段丘は大船地域から見日地域まで広く分布しているもので、標高はおおよそ七〇―五〇メートルで地域的に多少高度差が見い出されるが、一般的には北部に高く、南部に低くなる傾向が見られる。しかし、その大部分が五〇―六〇メートルの標高を示す所よりみると、函館付近の日吉町段丘に対比することができる。日吉町段丘は「関東地方の下末吉段丘に対比され、リス・ウルム間氷期(中川久夫・東北大報告)と考えられている。したがって、南茅部町上位海岸段丘はリス氷期とウルム氷期の間の温暖で高海水準時代に形成された海岸段丘と考えられる。
 上位段丘堆積物は臼尻地域においては海岸段丘を形成した段丘礫層の上に、火山灰、火山砂礫、泥炭、火山砂などが堆積しており、段丘礫層は硬質頁岩、凝灰岩、砂岩よりなる中新世汐泊川層を切ってその上にのっていると考えられるが、露頭においては、直接その間の関係を見い出すことが出来ず、臼尻小学校プール新設工事の際のボーリングによっても、深度一五メートルでは基盤岩に達しなかったとしている。段丘礫層の上面高度は約二五メートルであるから、かつての高海水準に地盤運動が加わって、このような高位置を占めるにいたったものと思われる。段丘礫層の上にのる火山灰、火山砂や火山礫は駒ヶ岳由来のものと考えられる。駒ヶ岳由来の火山灰はKO―aからKO―hまで分類されており(北海道火山灰命名委員会)、渡島半島においてこれら火山灰の分布およびその地形等に対する関係が報告されている。
 下位段丘はきわめて局部的に見出されるもので、安浦付近に存在する。標高は二〇メートルくらいである。精進川左岸での同段丘堆積物は、最大一五センチメートル程度の亜円礫よりなる砂礫層が四―五メートルくらい見出される。