台場通宝

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 安政四年(一八五七)着工した五稜郭築城には、近在の百姓たちも多く人足に徴用されたり、雇われていった。このとき工事の帳場役を勤めたという〓松田由蔵(文政元年生一八一八)がもらった台場通宝(松田幸彦所蔵)がある。
 タテ七五ミリ・ヨコ三三ミリ・厚さ三ミリの真鋳銭で、表は「台場通宝・江戸品川弐百五十文」、うら「嘉永六癸丑年(一八五三)御台場役所 人足用」と銘がある。松田家の倉庫には、戦前まで箱館通宝が叺に入ってあったという。五稜郭の築城工事のほか、弁天台場などの大がかりな工事には、たびたび近在の百姓が多く徴用され、この種の台場通宝などが通用していたことがうかがわれる。
 台場の文銭も、刀槍も曝し首も榎本の座興も、幕末からの急変のなかで多少混線しながらも、家々に代々伝えられてきた貴重な余話である。

台場通宝(表)


台場通宝(裏)松田幸彦所蔵