戦後の地方自治体の財政力は、全く力の弱いものであった。このような現状に鑑み、政府は市町村の規模を合理化して、その能力を強化することによって地方自治を確立するため、町村合併を促進することに国の方針を定めたのである。
建前として近隣町村・関係町村の住民が自主的にすすめるという、民主的な促進がうたわれていた。
合併促進法は三か年の時限法で、昭和三一年九月三〇日が期限であった。合併による財政的な優遇は、前面に明示されてはじめられている。
補助金の交付・起債の許可・特別交付税の増額交付、このほか事業の実施などにおいて合併を促進した新町村は、優先的に格付された。道の合併促進計画案の対象となっていて合併できないでいる町村は、苦しい行財政を余儀なくされることになる。
この国や道は町村合併の促進を、財政的な面で誘導しすぎると新聞報道は伝えている。
北海道町村合併計画 (昭和二九年)
1 合併計画の策定
本道の合併計画は昭和二十九年九月十九日策定されたが、この計画の作成に当っては、地方自治法第八条の二の規定に基き促進審議会の意見を聞くほか、道議会、市町村の全道連合組織及び関係市町村個々に対して更に意見を聞き、これらの内容を総合して計画をたてたものである。
なお、その概況は次のとおりである。
イ 北海道町村合併基本方針の決定 (昭二九、二、六)
口 合併計画について促進審議会に対する諮問 (昭二九、五、四)
ハ 合併計画について促進審議会の意見答申 (昭二九、六、二一最終答申)
ニ 道議会に対する諮問 (昭二九、七、一三)
ホ 道議会の意見答申 (昭二九、七、二二)
へ 市町村の議会議長並びに長の連合組織に対する諮問 (昭二九、八、一七)
ト 市町村の議会議長並びに長の連合組織の意見答申市議会議長会 (昭二九、九、七)
市長会 (昭二九、九、七)
町村議会議長会 (昭二九、八、二七)
町村会 (昭二九、八、三〇)
チ 関係町村に対する諮問 (昭二九、八、二三)
リ 北海道町村合併計画策定 (昭二九、九、一九)
計画内容次のとおりである。(参考として町村合併計画総括表を添付した。)
昭和二十九年九月十九日
北海道知事 田 中 敏 文
北海道における町村の規模の適正化の促進を図るため、地方自治法第八条の二の規定により、北海道町村合併促進審議会の答申を基礎とし、北海道議会、北海道市議会議長会、北海道市長会、北海道町村議会議長会、北海道町村会及び関係市町村の意見を徴して、町村合併計画を、次のとおり策定する。
[北海道町村合併計画]
参考 | |||
北海道町村合併計画 | 人 口 | 面 積 | |
第一 関係市町村において原則的に異論がなく合併を適当とするもの | 人 | 平方キロメートル | |
石狩支庁管内 | |||
[ | 篠路村 | 四、八三八 | 四六・五 |
札幌村 | 八、八五八 | 三五・一 | |
但し住民の意向によっては札幌市と合併することを適当とする。 | 計 一三、六九六 | 計 八一・六 | |
渡島支庁管内 | |||
[ | 吉岡村 | 四、一二五 | 一三・九 |
福島町 | 八、七六一 | 一七四・七 | |
計 一二、八八六 | 計 一八八・六 | ||
[ | 茂別村 | 六、〇〇四 | 一三二・三 |
上磯町 | 一八、七六八 | 一三〇・三 | |
計 二四、七七二 | 計 二六二・六 | ||
[ | 尾札部村 | 七、六〇七 | 七三・七 |
臼尻村 | 五、八七五 | 八五・八 | |
鹿部村 | 四、八四三 | 一一一・九 | |
計 一八、三二五 | 計 二七一・四 | ||
(略) | |||
第二 関係町村に異論もあり、なお、検討を続行すべき必要あるも、取りあえず将来市となるべき条件を保有せしめ置くために合併計画の策定を必要とするもの。 | |||
第三 関係市町村間において、なお、意見の調整を図る必要があるが、その総合的発展を期するため合併を適当と認めるもの。 | |||
渡島支庁管内 | |||
[ | 戸井村 | 七、八三四 | 五三・三 |
尻岸内村 | 八、三八六 | 九五・四 | |
椴法華村 | 三、六二六 | 二四・九 | |
計 一九、八四六 | 計 一七三・六 | ||
[ | 落部村 | 五、三七五 | 一九二・五 |
八雲町 | 二〇、五二五 | 五四六・二 | |
計 二五、九〇〇 | 計 七三八・七 |
(資料北海道公報 昭和三〇年一一月一日 号外)
合併による特例条件とは
1 従前の議員をそのまま合併町村の議員とする。
2 選挙はやるが、定数を地方自治法の規定の二倍まで増加することができる。
また、合併町村の永久の利益となる事業については、合併年度より五か年度に限り、地方財政法第五条第一項ただし書規定にかかわらず、「地方債」をもって財源とすることができる。
という内容で、鹿部・臼尻・尾札部三村は、この合併計画の出発点で、「第一、関係町村において原則的に異論がなく合併を適当とするもの」として計画(第一次)に組込まれていた。