災害復旧陳情

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茅部山越郡水産会は、駒ヶ岳爆発災害の復興事業について緊急総会を招集した。
   罹災地方在住会員に対して経費の徴収を免除すること。
   北海道水産会に適当なる救恤金の支出を申し入れること。
   政府に対し強力な陳情運動をすすめること。
 同会に復興促進委員会を組織し、役員議員全員がこの委員となり、救済復興の促進と陳情にあたり、その事務はすべて同委員会に委任することを決議した。
 
 八月一二日  池田北海道長官が災害地鹿部村を視察した。現地関係者とともに視察に随行した水産会吉田会長と加藤主事は、水産復興についても説明を許された。
 この日の長官の宿所となった旅館紅葉館まで随行した水産会長谷川・松林・磯野・盛田委員らは、入りかわり立ちかわり池田長官に災害地の実情を熱涙をもって陳情した。
 この夜同席した尾札部臼尻・鹿部三か村の村長は、水産会委員と協議をもち、大きな災害復旧事業をすすめるうえで全面的に協力し、その実現を期する上で運動をすすめる態度方針の確認をおこなった。
 一つは、復興促進会は被害地町村長が支庁長参与のうえですすめ、これをうけて道庁が決定した救済案を是認し、この計画案を支持すること。そうして、これ以上の問題案件や要望を道庁に申し出ないようにすること。そのうえで復興案の急速な実施方を政府に陳情するため代表を上京させることなどを約し、互いにその立場を心得て行動することを固く確認し合っている。陳情団の数と人選、その上京の期日は吉田会長に一任すること。
 道水産会の活動としてとりあげ、小池仁郎会長の上京を促すこととしている。町村長の諒解もあり、この意をうけて、八月一五日、吉田会長と加藤主事は札幌に出張して道水産会を訪ね、小池会長に説明し道水産会の全面支援と政府への陳情のため、会長が上京する旨の快諾を得た。
 
 八月一九日  小池道水産会長から「二一日朝、函館出港の連絡船で上京する」旨の電信が茅部山越郡水産会に入った。
 経費の関係上、陳情団は限定されたが、私用で上京する道会議員前田卯之助が旅途、同行斡旋してくれることになった。このとき上京した陳情団は、小池道水産会長、茅部山越吉田定助会長、加藤米次郎主事、盛田政次郎(鹿部)、磯野太三郎(臼尻)、長谷川忠次郎(尾札部)と、一行に加わった道会議員前田卯之助である。
 
 八月二二日  朝上野着、一行七名はまず東洋ビル内道庁東京事務所に向かい、日程の打合せをおこない、即日行動。二五日までの四日間を各省をたずね、面接を請い陳情書を提出し、救済復興案の実現を懇請して回った。
  総理大臣       濱口雄幸    首相官邸にて
  内務大臣       安達謙蔵    内相官邸にて
  内務省次官      湖恵之助    内務省にて
  内務省参與官     内ヶ崎作三郎  内務省にて
  内務省社会局事務官  川井章知    社会局にて
  内務省地方局長    次田大次郎   内務省にて
  内務省地方財務課首席 戸田吉     同
  農林大臣       町田忠治    農相官邸にて
  農林省政務次官    高田耕平    同
  農林省水産局長    長瀬定一    農林省にて
  農林省水産局水産課長 大浜喜一郎   同
  農林省水産局技師   長田景長    同
  大蔵省次官      河田烈     大蔵省にて
  大蔵省参與官     勝正憲     同
 又、内務財務次官、社会局長官、農林参與官、大蔵大臣、大蔵財務次官らはいずれも出張不在であったので、陳情書のみを提出して置いた。
 こうして陳情の結果、各省ともに事情同情に堪えざるものあるをもって取り急ぎ陳情の趣旨に副うよう取計うべき旨の回答に接し、農林省においては、取り敢えず長田技師、西嘱託を即日災害地に向け調査のため派遣せられた。