目次
/
新編弘前市史 通史編1(古代・中世)
/
第5章 中世後期
/
第二節 室町・戦国期の津軽
/
一 「日の本将軍」安藤氏
日の本将軍の多面性
387 ~ 388 / 553ページ
以上に述べてきたように、日の本将軍の呼称は
鎮守府将軍
と重複視され、
室町幕府
の北方政策の一端を担うような存在であり、一方では、東国の自立性を示すシンボルとして用いられていた呼称でもあった。史料としては、後者の方が先行していることから、内には後者の側面を、外には前者の側面を強調したのではないかともいう。
また、史料として日の本将軍が頻出するのは一五世紀以降のことであり、これは
アイヌ
の
サハリン
進出が達成された時期に一致しているという。これに注目したとき、日の本将軍の「日の本」は、『諏方大明神画詞』(史料六一七・写真162)に見える
アイヌ
の三分類の一つである「日ノモト」を背景とするもので、
アイヌ
の支配者という意味で往時をしのんで登場したという可能性も指摘されている。
写真162 『諏方大明神画詞』
安藤氏の日の本将軍呼称については、なお検討を要する課題であるように思われる。