曲物(まげもの)の商況

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杉などの薄い木材を加工して作る円形の容器である曲物の取引については、次のように報告されている。販路が次第に拡張してきていることや、価格が伸び悩んでいることが指摘されている。
(八月十二日報)同人
 曲物ハ本市産ニシテ、明治二十年頃ヨリ販路拡張ヲ計リシカ、年増盛大トナレリ、然シテ一月ヨリ六月ノ間最モ活溌ナル取引ヲナセシハ、一月四月ノ間ニシテ、五月六月ノ間ハ繁ナラス、緩ナラサルノ商況ナリ、其重ナル輸出先地方ハ、北海道庁ノ函館、岩内、小樽、札幌、根室各町村、秋田県各町村管内、東、西、北津軽、上北、下北、三戸、六郡ノ各町村及ヒ岩手県各町村ニシテ、此ノ輸出数量ハ千八百個(壱個ニ付百入)、其価格ハ五千四百円ナリ、尤一両年前ヨリ、元料価(杉檜木材)漸次騰貴セシト雖トモ、製造品ハ敢テ高価ニ売却スルコト能ハス、然ル所以ハ、該品ハ本市ノ物産ニシテ、所謂国産ト云フ可キモノナレハ、一層品質ヲ精撰シテ、永遠ニ活溌ナル取引ヲナサントノ目的ナレハナリ、而シテ其需用元料木材ノ産地ハ、秋田及ヒ中津軽郡ナリ
(同前)

 曲物については、原料が秋田県、青森県中津軽郡産であり、北海道、秋田県、岩手県に移出されていること、品質維持が重要であることが指摘されている。