大正五年九月十六日、弘前市各小学校六年男女児童は、青森入港の軍艦「河内」を見学した。本市小学校児童が軍艦を見学した最初である。
日本海軍の第一、第二、第三艦隊が青森港に入港したのを機会に、海軍になじみの薄い弘前市小学校児童に、軍艦を見学させてはどうかと、校長会が開かれ、協議の結果各校長とも見学に賛成した。十五日各校ごとに六年生男女を集めて軍艦見学についての心得と旅行についての注意を行い、十六日見学のため青森に出かけた。参加児童は各校合わせて一四六一人、特別列車を仕立てての弘前駅出発であった。初めて見た軍艦は児童たちに感銘を与えたに違いない。ことに男子児童には海軍の勇壮さが強く印象づけられたことであろう。小学生に対する軍事思想の普及は、陸軍にあっては軍旗祭への招待や発火演習の見学、海軍にあっては入港の際の軍艦見学など、専ら児童の興味とあこがれを喚起する方法がとられ、それが軍国主義教育へとつながっていくのである。