こうした運動の一つに乳幼児愛護運動がある。これは乳幼児の死亡率減少のために実施された事業で、昭和二年五月五日、全国一斉に実施している。現在のこどもの日であることに注意したい。青森県でも乳幼児愛護デーに参加するため、四月二十一日付で各市町村長・警察署長・女学校長・小学校長・婦人団体長宛に具体的な事業方法を通達している。そして以後、毎年この運動が実施されている。
弘前市立図書館所蔵の役場文書には、第七回乳幼児愛護週間に関する資料がある(資料近・現代2No.九四参照)。それによれば青森県学務部長が、昭和八年四月二十五日付で各市町村長と各小学校長宛に文書を通達し、五月二日から八日までの七日間、乳幼児愛護週間を実施して、思想の普及や保護施設の拡充をはかる事業を開催するものとしている。青森県社会事業協会青森県共済会が主催となり、県の婦人会、医師会が後援し、生後二年以内の乳幼児を発育標準により審査して、優良児三〇人と母親を表彰するというのである。
写真22 乳幼児愛護ポスター
青森県は度重なる凶作と恐慌に見舞われたこともあり、他の東北地方と同様、健民運動が重要な意味をもった。上記事業の具体的な内容を見ると、栄養不良児と母親に対する救済対策を講じるなど、恐慌・凶作の癒えない当該期を象徴するような事業項目が並べられていた。市町村内の牛乳業者と協議の上、愛護週間実施中の牛乳価格を減免し、栄養不良児に配給する措置もあった。