第三回青森県鉱産物品評会

81 ~ 83 / 965ページ
 昭和四年(一九二九)九月十五日から一週間、弘前市時敏小学校において、第三回青森県工産物品評会が開催された。この品評会は、青森県内各地の製造業者が各種生産物を出品し、また、県外からの出品があった。入場は有料であり、出品した製造物の売買契約も行われ、また、優良品は表彰された。県内の出品数は四二二三であり、このうち三四七九が弘前市民の出品であった。
 品評会審査長の大竹巽は、次のような審査報告を発表した。
弘前商工会主催工産物品評会審査終了し、本日を卜し、褒賞授与の式典を挙行せられ、不肖審査長として審査成績を述ぶるは、誠に光栄とする処なり、今回出品は前回に比し、其数及其人員共に多数にして、優秀なる技能を発揮せられたるもの少からず、審査に膺りては、斯道の権威者を依嘱し、極めて周密公平を旨とし、審査に就て、優等十一点十一名、一等三十三点二十九名、二等六十二点四十六名、三等八十五点六十九名、四等八十四点七十一名を挙げたり、而して今回審査に於て、最も採点に困難を感じたるは、其種類広範に渉り、然も出品点数少きもの多きもの等ある点なりと雖も、各班に渉り、極めて賞格を均霑せしむることゝせるも、遺憾の点なき能はす、諸氏希くは之れを諒せられよ、今回の出品に就ては、熱心なる技能の登場と、新考案を製品に表現し、前回に視られざる製品に接したるは、欣快とする所なり、然れとも詳細に今回の出品物を視るに、大要欠点とする所次の如くにして、是等は今後の改善に資せられたし
(『弘前商工会議所月報』二一一)

 このように全体の講評を行った後、品目別に批評を行い、欠点を指摘している。その主なものは次のようになっている。
 酒類にありては品質著しく高上せるものありと雖又劣等なるものあり、其品質の差甚しきものありたるは遺憾とする所なり、殊に酒類の如き明所に永く陳列するときは其品質を変化するのみならず、出陳上人目を引き難きものは之か方策に於て相当考慮を払うべきものにして、今回の品評会の如き一般観衆に芳名を知悉せしむると共に其嗜好を誘致せしむるの機会にありては其表装陳列に注意し顧客をして永遠に此に吸着せしむるの策を講ぜざるべからず
 染織物に於ては英ネル大部分を占む、益々地方特産物として糸染班色柄等に深甚なる注意を払ひ、一段の進展を期せられたし、又出品中従来見さる無地物、捺染物等増加し、新製品の進出を得たるは欣ぶ、今後一段の奮起を望む、又染色物に於ては、前回に比し品種、点数増加し、技工優秀なるものを視るも、尚水元滲落の不良引班等、改善すべき点少しとせず、尚熱誠なる努力を望む
 漆器に就ては他県の作品を模倣せず本県特産たる津軽塗を主体とし、之れを拡延し、他に見られさる模様を考案し、各品の形態及用途等をも考慮し、更に之れが配景如何を深く考へ、以て作品に表現すべく殊に其上塗りの光輝に対しては余りに過ぎざる様留意すべし
(同前)

 この他、履物、桶類、木製家具、曲木細工、雑工品、竹細工、菓子類、水産物、缶詰、醤油、味噌、麺類、手芸品、金物類、機械類につき、講評が行われている。