昭和十六年十二月八日未明、日本は米国と交戦状態に入った。日本軍のハワイ真珠湾攻撃である。これによって大東亜戦争は開始されたのだが、当時市内国民学校の様子を、和徳国民学校日誌から眺めることにする。日誌によると、大東亜戦争開始二週間の間に宣戦の詔勅を奉読すること四回、神社に必勝祈願すること二回に及んでいる。戦争開始をまるで儀式か宗教的行事のように取り扱っているのが奇妙な印象を受ける。
戦争勃発と同時に児童の士気を鼓舞するのは当然である。しかし、士気を鼓舞するのに荘重な儀式をもってし、神を恃(たの)んで戦勝を祈願するというのは、科学戦といわれた大東亜戦争下のことだけに、いかにもアナクロニズムな感じがするが、これも戦争の理念に狂信的ともいえる皇国思想を持ってきたからであろう。